ph101 VSサタンーsideシロガネー

 僕はフィードバックのダメージを堪えながら立ち上がる。


 僕の場には体力が4のミカエルと2のエウダイ。ヒョウガくんは体力7のニーズヘグと体力3のウェンディゴ。そして、タイヨウくんは残り体力4のドライグのみだ。対する氷川ヒョウケツの場にいるサタンの体力は22。しかも奴のフェイズになり、MPも10になる。……正直、状況は絶望的だ。勝ち筋が全く見えない。けど!


「ヒョウガ!シロガネ!無事か!?」

「問題、ない!」

「こんなの……かすり、傷さ」

「よかった……じゃあ、まだやれるよな!」


 タイヨウくんは諦めていない!ならば、僕も諦める訳にはいかない!


「当然だ!」

「勿論さ!」


 とはいったものの、僕の手札は3枚。MPは1だ。慎重に動かなければ攻撃のチャンスを失う。幸い、さっきの攻撃でヒョウガくんも正気に戻ったみたいだし、戦況に集中する事ができそうだ。


「口だけは一丁前だなぁ……でぇも、ドロー!!俺ちゃんはぁ手札から道具カード、魔王への供物を発動!デッキの一番上のカード一枚を魔王属性モンスターのフェイクソウルにする!」


 なっ!?フェイクソウルだって!?


「フェイクソウルだと?フェイクソウルとはいったい……」

「……レベルアップモンスターと同じになるんだよ」

「シロガネ!?何か知ってんのか!?」

「うん……操られてた時にちょっとね」


 サタンのマナに囚われていたとはいえ、精霊狩りワイルドハントであった事は恥でしかないと思っていたが、まさかこんな所で役に立つとはね。


「レベルアップモンスターは体力が0になっても、進化前のモンスターを取り除く事で、体力を1残して場に残るだろ?平く言えばソレと同じ効果を得たんだよ」

「……なるほどな……実に厄介な効果だな」


 そうだ。ただでさえサタンの体力を減らすのに苦労しているのに、フェイクソウルも持つなんて厄介極まりない。


「それだけじゃないぜぇ!俺ちゃんはぁ、MP4を消費してサタンのスキル闇の儀式を発動!自身のフィールドにいるレベル0のモンスターを自身のフェイクソウルとし、このフェイズ中自身のフェイクソウルの枚数分攻撃する事ができる!」


 闇の使徒がサタンに吸収され、サタンのフェイクソウルが3になる。つまり、奴は3回攻撃する事ができる!


「さぁサタンちゃぁん……ドライグをぶっ殺せ!!」


 ドライグの体力は4!サタンの攻撃を通す訳にはいかない!


「僕は体力3を消費して魔法カード、贖罪への祈りを発動!」


 魔法カードの効果でエウダイは消滅し、ミカエルの体力が3になるがタイヨウくんを守れるなら構わない!


「相手モンスター全ての攻撃を強制終了させる!!」

「ほぉー?」

「ぐっ……これで、お前は攻撃出来ない!」


 レベルアップ出来ない僕は……悔しいがこの中で一番弱いだろう。ならばせめて君の、タイヨウくんの盾となる!


「シロガネ!?お前っ……」

「平気さ!そんな事より君のフェイズだよ!」

「あ、あぁ!ドロー!」


 タイヨウくんの手札は6枚となり、MPは7まで回復した。彼なら活路を見出してくれる!


「俺は……手札から道具カード、騎士王からの下賜を使用!3枚ドローして1枚手札に加え、2枚はダストゾーンに送る!そして俺はMP2を消費して手札から地龍の大剣をドライグに装備だ!」


 タイヨウくんは装備カードを使ってドライグの攻撃力を上げるつもりなのか。


「俺は地龍の大剣の効果を発動!自身のフェイズ中、相手モンスターの攻撃力を0にし、減少させた分の攻撃力を得る!俺はサタンの攻撃力を0にし、ドライグの攻撃力は5にする!」


 氷川ヒョウケツのMPは6も残っている。サタンのスキル、武装解除を使ってくる可能性がある。警戒を強めないと。


「ドライグ、行くぞ!」

「待ちくたびれたぞ小童!」


 タイヨウくんがマナを放出し、ドライグのマナと循環させ始める。これは、レベルアップか!


「大地から目覚めし赤き龍よ!秘めし力を解き放ち勝利へと導け!ドライグ!レベルアップだ!!進化せよ!レベル4 ドライグ・ペンドラゴン!!」


 ドライグが進化し、攻撃力が5から6になる。ドライグのダブルアタックが決まれば、サタンに12のダメージを与えられる!


「俺は手札から道具カード、マナの葉肥を使用!デッキから魔法カードを1枚ダストゾーンに送り、MPを1回復する!更に、MP4を消費してドライグのスキル、解かれた封印を発動だ!このフェイズ中、自身の攻撃力が倍になる!」


 すごい!これでドライグの攻撃力は12となった!ダブルアタックが決まれば、サタンのフェイクソウルを一つ使わせる事ができる!


「ドライグ!サタンを攻撃だ!」

「おおーっと!そうはさせねぇぜ?俺ちゃんはぁ、MP1を消費して魔法カード、魔王のみせしめを発動!自身のモンスターが攻撃された時ぃ!攻撃してきた相手モンスターの攻撃力を0にし、減少した攻撃力の数値分を自身の攻撃力に加算して反撃を行う!」


 ドライグの攻撃力が0になり、サタンの攻撃力が15となった。


「俺ちゃんの為にセコセコと攻撃力を上げてくれてご苦労さん!お礼にぃ……苦痛を与えてやるよぉ!」

 

 まさか、奴はこれを狙っていてわざと装備カードを破壊しなかったのか!?


「俺は!ダストゾーンの冷気誘引をゲームからドロップアウトさせ、デッキから氷属性の装備カードを1枚装備する!俺が装備するのは氷結ダガーガンだ!」


 ヒョウガくんの手に、銃剣の付いたハンドガンが握られる。


「氷結ダガーガンの効果を発動!相手モンスターにダメージ1を与え、攻撃対象モンスターを自身の別のモンスターに変更する事ができる!」

「ヒョウガくん!?」


 ヒョウガくんの場にいるモンスターの体力はどちらとも15もない。まさか彼もタイヨウくんの為に自身のモンスターを犠牲に!?


「ヒョウガ!!」

「安心しろ、タイヨウ」


 ヒョウガくんはサタンを睨みつけながら、静かに口を開いた。


「MP3を消費してニーズヘグのスキル、呪縛の鎖を発動!自身が相手モンスターの攻撃の対象にされた時!そのモンスターの攻撃力を1にして、下げた分の攻撃力を得る!!」


 サタンの攻撃力が1となり、ニーズヘグの攻撃力が17まで上がる。


 なるほど!これなら致命傷にはならない!ヒョウガくんはこれを狙っていたのか!


「おいおいぃ、防戦一方じゃねぇか。そんなんで俺ちゃんに勝てると思ってんのかぁ?」

「何を勘違いしている?」


「カウンターは、俺の専売特許だ」


 ヒョウガくんは氷結ダガーガンをニーズヘグに向ける。


「氷結ダガーガンの更なる効果を発動!このフェイズ中、自身のモンスター1体に反撃を付与する!!」

「何っ!?」

「返り討ちだ!やれ!ニーズヘグ!」

「言われなくとも!」


 氷川ヒョウケツの顔が歪む。舌打ちをしながら、サタンのスキルを発動させた。


「俺はMP4を消費してサタンのスキル、武装解除を発動だぁ!これで氷結ダガーガンの効果はーー」

「僕を忘れてもらっては困るな」


 タイヨウくんが地龍の大剣を装備した時から、警戒していたよ。そのスキル!!


「僕はMP1を消費して、魔法カード魔光封を発動!相手モンスター1体のスキルを1つ使用不可にする!対象はもちろんサタンの武装解除だ!」


 光り輝く剣がサタンを突き刺す。サタンの攻撃が決まりニーズヘグの体力が6になる。しかし、すぐにニーズヘグが反撃した。


「があああああああああ!!」


 合計17ダメージがサタンを襲う。サタンの体力が4まで減り、氷川ヒョウケツはフィードバックの痛みを受けた。


「やったな!ヒョウガ!シロガネ!」


 タイヨウくんが嬉しそうに笑う。僕も奴に大ダメージを与えた事に安堵の息をついた。これで勝ち筋が見えてきたと一瞬だけ気を抜いた瞬間、悍ましい……なんとも言えない気味の悪いマナが周囲に充満していた。


「……ククっ、ククククク、くあーっヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、あひゃひゃ、ひゃ……」


 なんだこのマナは?いつの間にこんなに広がっていたんだ?


「う゛っ」


 恐怖、苦痛、憎悪……そんなこの世の全ての負の感情を煮詰めたような、そんな気持ち悪いマナが体にまとわりつき、逆流する胃液。手で口元を覆い、なんとか吐き気を抑えた僕は、元凶であろう氷川ヒョウケツの方をじっと見つめる。


「調子にノッてんじゃねぇぞ虫ケラがあああああ!!」


 奴の体から大量の黒いマナが吹き出した。そのマナはサタンを包み込み、循環する。


 精霊とのマナの循環!?まさか……そんな事ありえるわけが……。


「サタンよ!時は満ちた!千年という長き眠りから解放されし魔の王よ!地上に舞い降り!災厄の雨を降らせ!!」


 サモンマッチのモンスターのレベル上限は5だ!既にレベルが5のサタンがレベルアップできるはずがない!


「レベルアップだぁ!進化せよ!レベル6、神の敵対者サタン!!」


 膨大な、恐ろしいマナが解き放たれる。その黒きマナは次元すらも貫き、空間に穴を開けた。


「遊びはやめだ……こっからはぁ……」



「楽しい楽しい虐殺の時間だ」

「僕のフェイズだ!ドロー!!」


 不味い、不味い不味い不味い不味い!奴は危険だ!はやく、はやく倒さなければ!


「僕は手札から道具カード、禁断の実を使用!デッキの上から5枚のカードをダストゾーンに送り、ミカエルの攻撃力を5上げる!!」


 これでミカエルの攻撃力は7。レベルアップしてしまったサタンの体力は9だ。奴のフェイクソウルも4になってしまった。このフェイズで仕留める事はできなくとも、少しでも多くのダメージを与えなければ!


「ミカエル!サタンを攻撃だ!!」

「必死だねぇ……哀れすぎて俺ちゃん泣いちゃいそぉ〜」


 奴のMPは1!レベルアップして6となったサタンのスキルは魔の外典の効果を持ってしても使えないはず!サタンのスキルを発動させる前になんとしてでも倒さなければ!!


「MP1を消費して手札から魔法カード、魂の代償を発動ぉ」


 ここで魔法カードだと?妨害か?防御か?いずれにせよ、これで奴の手札もMPも0になる。次のヒョウガくんのフェイズで一気に決める事ができる!


「フェイクソウルを一つ取り除きぃ、自身のモンスタースキルを使用する事ができる!」


 モンスタースキルだと!?いや、奴の手の内が分かると思えば悪くはない!


「俺ちゃんはサタンのスキル、次元操作を発動!強制的に自身のフェイズまで進める事ができる!!」

「は?」


 今、奴はなんと言った?強制的に自身のフェイズまで進めると言ったのか?そんなスキルありえるのか!?くそっこのまま進ませる訳にはいかない!!


「僕はMP1を消費して魔法カード聖人の祈りを発動!!このフェイズの戦闘を放棄する代わりに、自身のモンスター1体の攻撃力の半分の値のMPを回復する!!」


 これで僕のMPは5になった……けど、次元操作を何度も使われたらどうすれば……。いや、諦めるな!タイヨウくんみたいになるんだろう?だったら負けることなんか考えるな!絶対に勝てると信じるんだ!


「言ったろ?こっからは虐殺の時間だってなぁ!てめえらはぁ俺になす術なく蹂躙される運命なんだよぉ!!俺のフェイズだ!ドロー!!おっ!いぃカード引いちまったなぁ……やっぱ俺ちゃんって持ってるんだよねぇ」


 なんだ?奴はどんなカードを引いたんだ?


「俺ちゃんはぁ、手札から道具カード、叡智の書を使用!手札が選択した自身のモンスターのレベルと同じ数になるまで引くことができる!」


 そんな!?せっかく奴の手札もMPも削ったのに!ここでそんな手札増強カードを引くなんて……。


「そんでぇ、MP2を消費して手札から魔法カード、魔導武器盗影を発動!相手の装備している武器を一つ破壊し、このフェイズ中破壊した武器の属性を無視して装備する事ができる!俺ちゃんが選択するのはぁ……地龍の大剣だよ!おら寄越せ!」

「ぐぬっ!」

「ドライグ!!」


 ドライグの持っていた大剣が壊され、地龍の大剣を模した黒い剣がサタンの手に渡る。


「確かぁ、地龍の大剣ってぇ〜相手モンスターの攻撃力を奪えんだよなぁ?んー、だぁれにしよっかなぁ〜。つってもぉ、ぶっちゃけ選択肢って一つしかないよねぇー」


 氷川ヒョウケツは人を小馬鹿にするような態度でぶつぶつと呟いていたかと思うと、ニーズヘグを指差した。


「さっきからコソコソ反撃するお前ぇ!お前しかいねぇよなぁ!?つぅわけでぇ、ニーズヘグの攻撃力いただきまーす!これでテメェのモンスターは攻撃力0のゴミに成り下がったなぁ!ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」

「キサマァ!!我を愚弄するかぁ!」

「気持ちはわかるが落ち着け!ニーズヘグ!!」


 ニーズヘグの攻撃力が0になり、サタンの攻撃力が6となった。


「じゃあゴミはゴミ箱に捨てねぇとなぁ!サタン!ニーズヘグを攻撃だぁ!」


 ニーズヘグの体力は6。MPが0のヒョウガくんではこの攻撃は防げない。ニーズヘグをレベルアップさせる事ができればフェイクソウルの効果で耐えられるが、進化条件を満たしていたとしてもウェンディゴがいてはレベルアップできない。


「俺はMP1を消費して魔法カード、大地から蘇る力を発動!自身の倒されたレベル2以下のモンスタースキルを使用する事ができる!俺はツァイトウルフの強固な結晶を発動して、相手から受けるダメージを0にする!」


 タイヨウくんがすかさず魔法カードを発動させてヒョウガくんを守ろうとするが、奴ははいざんねぇんと言いながらカードを手に取った。


「俺ちゃんはぁ、手札から道具カード黒マナの欠片を使用しまぁす!効果はぁ……このフェイズ中、自身の装備している武器に貫通効果を与え、攻撃によって相手モンスターにダメージを与えたらその分のMPを得るんだよぉ!」

「そんな!?ヒョウガ!!」


 黒マナの欠片の効果によって、ツァイトウルフの強固な結晶が破られる。しかし、ヒョウガくんはすぐに武器を構えて臨戦体制を取った。


「問題ない!俺は氷結ダガーガンの効果を発動して相手モンスターにダメージ1を与え、攻撃対象を変更!ニーズヘグからウェンディゴに変更する!ぐあああ!」


 ニーズヘグの代わりにウェンディゴが消滅する。ヒョウガくんはフィードバックのダメージで飛ばされそうになるが、なんとか堪えているようだった。


「ぐっ、この瞬間!俺のフィールドのモンスターは1体となり全ての条件を満たした!ニーズヘグ!」

「フン、やっとか」


 ヒョウガくんはニーズヘグとマナを循環させ、レベルアップの準備をしているようだった。条件は分からないが、既に満たしていたらしい。

 

「氷の大地に囚われし邪龍よ。その身に秘めし憎悪を呼び覚まし、罪人の魂を喰らい尽くせ!進化せよ!レベル4、終末の邪龍ニドヘッグル!」


 ニーズヘグからニドヘッグルの姿に変わり、体力が11まで回復した。フェイクソウルも1になり、彼がこのフェイズで倒される可能性は無くなった。むしろ、このフェイズで危ないのはーー。


「んだよ。テメェも使えんのかよレベルアップぅ……んじゃぁ先に一番弱ぇザコから殺すか。そこのレベルアップしてねぇガキからよぉ!!」


 この、僕だ。


「俺はぁMP1を消費して手札から魔法カード、魔王の波動を発動!自身の攻撃力分のダメージを相手の全てのモンスターに与える!!」


 ドライグの体力は9。フェイクソウルもある。このダメージを受けても問題ない。けれど、ミカエルの今の体力は3だ。この攻撃を喰らえば僕は……。


「俺は!ダストゾーンの夜魔女の呪詛をゲームからドロップアウトさせて効果を発動!相手モンスター1体の攻撃力を0にする!」

「……タイヨウくん」

「んじゃあ。俺ちゃんもダストゾーンにある魔王の障壁をゲームからドロップアウト!効果はぁ、このフェイズ中、自身のモンスター1体は相手の魔法カードの効果を受けないいいい」

「そんなっ……シロガネ!」

「ほいじゃまぁ、先ずはお一人様を地獄へご案なぁい!良い悪夢をぉ!」


 負けるのか?僕は……こんな所で、レベルアップもできず、無様に負ける?そんな……いやだ。負けたくない!もっと、もっとタイヨウくんの隣に立っていたい!!彼の役に立ちたい!でも、ミカエルのスキルじゃ効果ダメージは対処できない。MPがあっても手札のない僕には何もできない。悔しいが、諦めるしかーー。


 ーーーー気に食わない私に負けて悔しいんでしょう?ならその気持ちをぶつけてきなよ。


 あぁ、ちくしょう。やっぱ君はムカつくな。


 ーーーー君が馬鹿にしている先輩は、めげずに挑んできた。そして、強くなっていった。


 なんでこんな時に、憎たらしいあの女の顔なんか思い出すんだよ。


 ーーーー最後に勝ってみせなよ。天才なんでしょ?


 そうだよ。僕は天才だ。天才でなければならないんだ!天才である事が僕の存在意義なのだから!!


 だったら、あの女の鼻っ柱をへし折るまで負けられない!あの女をギャフンと言わせるまで負けてたまるか!!あの女に出来たんだ!僕にだって出来る!絶対に成功させてみせる!!


「ミカエル!」

「主っ!」


 僕がマナを放出しながらミカエルを呼ぶと、ミカエルは僕の意図を察したのか、すぐにマナを循環し始めた。


 集中しろ。ステュクスをレベルアップさせる事は出来たんだ。なら、ミカエルとだってやれる!ここで成功させなければ、僕は一生あの女に追い付けないだろう。そんなの、僕のプライドが許さない!!



「戦いの守護天使よ。我らを守り、目の前の凶悪を消し去りたまえ!!」


 僕の体の中のマナがどんどん肥大していく。もっと、もっとだ。あと少しでミカエルをーーーー今だ!!


「レベルアップだ!進化せよ、レベル4大天使ミカエル!!」


 美しく、孔雀の尾羽の文様を模した大きな翼を持った天使が僕の前に現れる。右手に剣を、左手には秤を持った神の使徒と呼ぶに相応しい姿の天使が魔王と対峙する。


「ざぁんねん殺せなかったかぁ……んでもぉ!ダメージは受けてもらうぜぇ!!」

「うっ!」

「主っ!」


 ミカエルの体力が8から2まで下がる。ドライグは3になり、ニドヘッグルは5となった。けど、まだ誰もいなくなっていない。


 なるほど、ミカエルの進化条件はダストゾーンに天界属性のカードが5枚以上だったのか……。


「そんでぇ、レベルアップ早々申し訳ないけどぉ……MP5を消費してサタンのスキル、贄の回収を発動!相手モンスターのフェイクソウルを奪い、奪ったフェイクソウル分攻撃する事ができるぅ!ゲヒャヒャヒャヒャヒャ!テメェ等のフェイクソウルは俺ちゃんのもんだぁ!御馳走様ぁ!大変美味しゅうございましたぁ〜。お礼に拳をプレゼント!死ねオラァ!!」


 奴がスキルを発動させるが怖くない。ミカエルの新たなスキルを使えば対象できる。


「……ミカエル」

「はっ!」

「MP4を消費して、大天使の守護を発動だ」

「承知いたしました!我が主よ!」


 僕がスキルを発動させると同時に、ドライグとニドヘッグル、ミカエルの体を光の膜が覆う。


「このフェイズ中、自身の全てのモンスターは相手から受けるダメージを全て回復に変える」

「なんだと!?」


 サタンの拳がドライグに当たるが、ドライグは無傷だ。さらに体力が回復し、9まで増えた。


「さぁいくらでも攻撃するがいい……できるものならね」

「チィッ!!」

「さんきゅーシロガネ!助かったぜ!」

「礼には及ばないよ。君を守れたのなら本望だ」


 氷川ヒョウケツは苛立たしげにフェイズを終了させた。これで奴のフェイズは乗り切った。これからは、奴風に言うなら僕達の反撃時間だな。


 


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