君がいたから

ミミズク☆左目

第1話

〜彼女の秘密〜


「大好き。」

そう言って彼女は光の中へと消えていく。

ピピピピ ピピピピ ピピピピ ピッ

目覚まし時計を止めてゆっくり起きる。僕の名前は、山下和也。高校一年生だ。

(また、あの夢か)

最近、いつも同じ夢を見る。

僕と同じくらいの歳の女の子が「大好き。」そう言って消えていくのだ。

「おはよう」

「...」

母が挨拶をしてくれるがいつも無視している。

「行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

僕の小さな声にも母は答えてくれる。

(いつからだろう。自分にすら、興味がなくなったのは)

ー学校ー

ドアを開け教室に入る。

だが、誰も声をかけない。

僕は、いわゆる陰キャである。

でも、もうどうでもいい。

「和也くん、おはよう。」

こんな僕に毎日声をかけてくれるこの人は同じクラスのかすみさんだ。勉強は学年一位、運動もできて、誰にでも優しい。全てが完璧だ。

「え、何であいつかすみさん話してんの?」

クラスのみんながざわつく。

「なにしてるの?」

「...」

変な噂が立たないように、無視する。

「何であいつかすみさんを無視してんの?」

じゃあどうすればいいんだ。

チャイムが鳴りみんな席に着く。

みんなからの視線が痛い。

ー家ー

学校が終わり家に帰る。

「ただいま。」

「おかえり。学校はどうだった?楽しかった?」

「...」

母を無視して自分の部屋に入る。

「あ、今日は病院の日だった。」

少し前に腕を怪我をして、最近良くなってきたので、検査しに行くのだ。

ー病院ー

受付を済ませて、順番を待つ。

「うちの子が癌だなんて。」

泣きながら、母親が叫ぶ声が響き渡る。

しばらくして、部屋から人が出てくる。

「え、」

僕は目の前の光景に驚きを隠せなかった。

部屋から出てきたのは先ほど叫んでいた母親と母親を慰める子供が出てきた。

「か、かすみさん?」

「え、和也くん?」

母親を慰めていたのは、かすみさんだったのだ。

父親が母親を連れて行く。

かすみさんと二人になった。

「かすみさん、癌ってホント?」

思い切って聞いてみた。

「初めて喋ってくれたね!」

「いや、今はそうじゃなくて。」

「聞いちゃった?そうだよ?癌らしい!あと半年しか生きれないらしい!」

とっても半年後死ぬとは思えないほど元気に言う。

「な、何でそんなに平気そうなんだよ。あと半年しか生きていられないんだろ?」

「うん、そうだよ?」

彼女は笑顔で答える。

「だって私が悲しむとお母さんが悲しむ。お父さんが悲しむ。友達が悲しむ。私は、みんなの太陽でいたいの。だから私は、私だけは、悲しんじゃダメなんだ。だから、みんなには内緒でお願い!」

「うん、わかった。でも、じゃあ何で僕にはそんな話するの?」

「それは君が、私の秘密を知っちゃったからだよー。」

「なるほどね。」

「あ、実は私、死ぬ前にいくつかやりたいことがあるんだー。」

「へー。そうなんだ。」

「だから、明日から君にはそれに付き合ってもらう。」

「え、なんで?」

「山下さーん。」

受付の人に呼ばれる。

「はい。」

返事をして行こうとした時、

「じゃあ、また明日。」

「また明日。」

この出会いが、僕を変える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君がいたから ミミズク☆左目 @2779790391

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る