とある少女の望むものは

みさか/UN

とある少女の望むものは

ここはとある病院の一室。

その中心に置かれた白いベッドには、一人の少女が横たわっていた。

少女は長いこと一点を見つめており、表情に変化はない。

しかし時折、窓の外に視線を向けることがある。

––––––––まるで外の何かに期待しているように。



少年と青年、どっちの方が表し方正しいのか迷うぐらいの年齢の彼は急いでいた。

彼の名は‥‥正直この話にその情報は必要ないし、そもそもめんどくさいので省ry「給料減らすぞ?」彼の名は春葵である。

ちなみにパソコンで『はるき』と入力してもだいぶ下の方行かないと出てこないので、便宜上ここからは『H』とさせてもらう。


話を戻そう。


Hは急いでいた(二回目)。

それもそうだろう、最愛の妹が事故に遭い、救急搬送されたのだ。

ちなみに『最愛の』というのは自他共に認めており、おそらくHはシスk「俺はシスコンじゃなくてただの妹好きだ」訂正しよう、地の文にいちゃもんつけるくらいの余裕はありそうだ。

ていうかシスコンと妹好きはイコールであるので、結局Hはシスk「だから俺はただの妹好きだ」彼に日本語は通じないらしい。


ちなみに妹の名は夏帆。

『夏』に『帆』で夏帆である。

名前の由来は『夏のように暖かく、人生の大海でも帆を張って進んでいけるように』というのがである。

本当の由来は『帆立の旬は夏だから』というふざけた理由であるが、他言無用である。


少女は窓の外を見、そして少し苦い顔しながら呟いた。


「‥‥うーん微妙かも」

「夏帆〜!無事か〜!」


そのとき少女––––夏帆の背後から大声が響いた。

ここは病院である。

つまりHがやっていることは非常識なのだが、夏帆は聞こえていないかのように、目を閉じ、手を合わせた。


Hはそんな夏帆を不思議に思いながらも、目立った外傷がないことに安堵した。

来る途中で母から電話があり、明日退院するとのことなので予想はしていたが、愛しの妹に重い怪我がないことに、自分の目で見て心から安心したようであった。

そしてHは言った。


「なんで俺だけイニシャルで表記するんだ?普通名前じゃね?」


その言葉は妹への心配ではなく、地の文こちら側へのクレームだった。

どうやら彼に日本の常識を当てはめるのはやめておいたほうがよさそうだ。

ちなみに理由は前述の通り、入力がめんどくさいからである。


夏帆は意味不明な言葉を発する兄を無視し、また呟いた。


「この調子じゃありそうだな‥‥学校」


現在時刻午前11時。

雨雲は明日まで留まるどころか、早くも晴れ始めていた。

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