第48話 大掃除は果てしない・七海編
「七海ー、おばあちゃんの部屋はどうなったー?」
「うん、ハタキと掃除機は終わった。あとは窓拭きを今、やってる」
七海は窓を拭きながら呼びかけた母親に返事をした。祖母が年末年始は家で過ごすことになったために祖母の部屋の掃除をしているところだった。
「窓をを拭いたら気休めだけど、こないだの水晶を置いて場を浄化しますか」
エプロンのポケットからそれを取り出し、鏡台の上に置く。
地学部って地味かと思ったけど、面白い一年であった。しっかりした部長、破天荒だけど優しい副部長、どうして公立にいるのか分からない先輩や先生、気配り男子など個性的な面々や、よく遊びに来るOBなどでいつも賑やかであった。
途中から実質的な顧問になった先生の恋の応援したり、文化部とは思えないくらいいろんなことがあった。
「先生たちも初詣デートの相談とかしてるのかなあ。想像するとこっちまでウキウキしちゃう。私もそういう人が現れたらいいなあ。でも、こういうのは狙うと逃げるというから、焦らないでおこう」
そして、蛍のことも気になっていた。あれほど好きのオーラを出している美蘭先輩の気持ちに全く気づいていない。最初は受け入れたくないからそういうふりをしているのかと思ったが、部活を続けているうちに本当に気づいていないとわかった。
そんな蛍が先生の恋を取り持ったり、涙の説得をしていたのに、自分のことには無頓着らしい。いとこで幼なじみという近い関係だから何かしてくれても、そんなものだからと思っていそうな節がある。
「森下部長も可哀想だなあ……」
自分を含む皆が気づいて噂しているが、全く脈がないのに美蘭に片想いし続けている部長についても杉や金町達と話題になったことがある。
あのときは「やっぱそうよね!」と三人揃ってハモったことに大笑いしてしまった。
つくづく、蛍といい、美蘭先輩といい、三田先生といい、部長といい、自分の気持ちは気づかれていないと思っている。
「って、自分も恋をしたらそうなるのかしら。気をつけないと」
そんなことを考えているうちに窓は拭き終わった。あとは自分の部屋の片付けだ。
今年採った鉱石や化石の手入れをするか、他のことから始めるか。
「来年も面白い石や化石が採れるといいなあ」
「七海、そろそろお昼にしましょう」
「はーい、ママ。今行く」
バケツと雑巾を片付けて七海はリビングへ向かった。
「うちはまず、おばあちゃんの健康祈願だね。帯留めの件ですごく喜んでいたし、メンタルは大事なんだな」
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