最終章 魚川君、さらわれる
第46話 大掃除は果てしない・蛍編
ちょっと早いクリスマスプレゼントも渡して、いつものとおりに美蘭の家と合同でクリスマスパーティーをした石川家は、年末の準備に入っていた。
つまりは大掃除である。
「この石の欠片たちをどうしよう。こないだの糸魚川石と高温石英は頑張ってサンプルケースに入れてラベリングしたけど、もう力尽きた」
石の墓場を前に蛍は悩んでいた。
「この水晶は結構な大きさだし、この化石はくっつけてそっと削れば復元できそうだし、これは……何の化石だったっけ?」
『やっとこれらに手を付けると思ったらもう挫折か。人間のルールはよく分からないが、化石なら美蘭が言うように燃えないゴミに出せば良いのでは?』
「えー、復元したら貴重な化石で世紀の大発見だったら嫌じゃん、もったいない」
『ダメじゃ、こりゃ。せめて、水晶と化石のニ種類に分けたらどうじゃ』
「そうだねえ」
蛍は返事したものの、乗り気ではない様子だ。
『ところで一つ尋ねたいことがある。こないだの合宿で取った石は蛍の採った分以外はどこへ保管したのだ?』
「んー、地学室の未整理の箱の中、あとはトパーズや高温石英みたいに各自持ち帰ったものもあるかな? なんで?」
『うむ、昔から山の石は拾ってはいけないという話は聞いたことないか?』
「魚川君の昔だと人類始まってないのですが」
『とにかく、悪い石も混ざってるからむやみやたらと拾ってはいけないと言う話がある。
まあ、鉱石ハンターはそんなことを気にしたら何も採れないが。
で、本題じゃ。岐阜で採った石の中に良くない“気”を発している石があった。多分、川の水で抑えられてたいたのが、引きあげられてしまって解放された状態じゃ。
わしの本体はこちらだから、遠すぎてあちらでは浄化できなかった。こっちで浄化しようと思っていたら終業式の日には校内にはその気配が無かった』
「ってことは、誰かがその不吉な石を持ち帰ってしまったってこと?」
『今日明日どうにかなるという訳ではないし、蛍や金町、杉みたいに自分を強く持っていれば無害だと思う。しかし、もしも持ち主の心が弱っていたら悪影響が出てしまう』
『悪影響?』
『石も心の闇を養分にして闇が増大するし、持ち主はその闇に飲まれて心身が壊れてしまう。早めに探すのが良い』
「って、その前にこの部屋を
『確かにな。今まで黙っていたが石の墓場、特に化石が怒っているぞ。復元なりゴミとして供養しないとお主でもどうなるかわからん』
「え……。ゼロ感だからわかんなかった。そ、そんなに怒ってる?」
『そりゃ、眠っているとこを木っ端みじんにされて、持ち帰って長年放置されりゃな。人間だって木っ端みじんはともかく、連れてこられて長く放置されたら怒るじゃろ?』
「蛍、仕分け行きまーす!」
慌てて蛍は石の墓場の仕分けに取りかかった。
(こうでもしないと動かんからな。しかし、禍々しい石の正体と持ち主も探さないと。本当に闇に呑まれてしまうこともある。どうやって探すべきかのう)
「しかし、そのブツはうちに無く、学校に無いならしらみつぶしに聞く以外ないよね。トパーズをあげたミラ兄にも確認しないとならないし、伊藤さんにも連絡が必要になる。岐阜参加メンバーのうち、金町はラブラブで幸せ、三田先生も正式に付き合う前の『あー、もう、じれったい』のほっこり状態だし、あらゆることにしたたかな杉君も後回し。伊藤さん、花音と七海の誰かかな。七海はおばあちゃんのことがあるし、花音は……どうだろ?」
『気づいてないのか?』
「何が?」
『金町君も言ってただろ?』
「何を?」
『あのな、美蘭がわざわざアクセサリーくれただろ?』
「うん、何か企んでるかもしれないけど、私の名前の石は持ってないからって。気が利くよね。今度付けていこう」
(こりゃ、花音殿とはライバルとして成り立たないな。美蘭はずっと蛍の方を向いているし。とにかく伊藤殿はもちろん、花音殿と七海殿のどちらかか持っていたら状況は良くないな)
『
「わかってるよー」
(本当に分かってるのか?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます