第45話 それぞれのプレゼント
「はー、朝が早かったのと、追いかけっこしたから疲れた」
蛍は山程の課題とサンプルと共に帰宅した。三田先生達は帰り際にチラッと見るといい感じだったから、いきなりはないだろうけど、いずれ付き合うだろう。
指輪の伊藤さんにもトパーズは届いたようで先ほどお礼の電話がかかってきた。
「ミラ兄とお揃いにしたかったけど、あの話を聞いたら伊藤さんにも幸せになってほしくなった」
『あの話と蛍の真剣な説得があったから、三田先生にも勇気が出せたようだな、そういえば美蘭はどうしたのじゃろ?』
「あっ、三田先生に気を取られてミラ兄の分のラッピング忘れてた。むき出しで渡すのもなんだし、スーパーの袋じゃダサいし、どうしよ。でも、クリスマスまであと少しあるし」
「蛍ぅ〜。美蘭くんが来たわよ。ケーキ食べましょう」
「げ! え? は?」
いつもは美蘭が来ると部屋に連れてきて一緒にケーキを持ってきてくれる母がリビングに呼ぶということは、成績を見せる公開処刑付きだ。
「ううっ。ラッピングの心配の前に公開処刑があった。
『不特定多数に晒されるほうがダメージ大きくないか?』
「ううっ、ママのご機嫌取りにトパーズ使ってしまうかもしれない」
『そこまではせんじゃろ、美蘭が勉強見てたのだからな』
蛍が観念して降りていくと、にこやかな母となんとなくソワソワしている美蘭がいた。彼まで公開処刑に立ち会わせるのか。
「はい、ママ。成績表。まだ怖くて私も見てない」
「じゃ、検分しますかね。……あら、全体的にあがっているじゃない」
「え??」
「俺のスパルタ教育が効いたようです」
自信ありげに美蘭が言う。あのしんどい日々が効いていたのか。ならばやはりトパーズは母でなく美蘭に渡さないとならない。
「ミラ兄、ちょっと早いけどこないだの合宿で見つけたトパーズ。勉強のお礼にあげるよ、クリスマスプレゼントのラッピング用意してなかったからむき出しだけど」
「あら、ママにはないの?」
「ママには幸運の水晶多数。小さいけど」
「あらまあ、でも水晶でも国産は今は珍しいわね。ケースに入れてきましょ」
母が席を外したとき、美蘭が口を開いた。
「三田先生、どうだった?」
「うん、皆でサポートしたからいい感じ。婚約破棄から時間経ってないからすぐに付き合うとは思わないけど、いずれ付き合うと思うよ」
「そうか、良かった。あ、俺もプレゼントあるんだ。ちょっと早いけど」
そういうと美蘭は木製のアクセサリーケースを出した。中には蛍石のペンダントにイヤリング、ブレスレットと入っている。丁寧に磨いてあってツヤも良い。
「え? 蛍石のアクセサリー? こんなに?」
「あっちで会ったハンターさん達と協力して取ってきて、ネット見て簡単だけどアクセサリーにしたんだ。オシャレしてほしくて……」
美蘭も赤くなっている。
「ミラ兄、何か企んでる? それとも誰かへの予行演習?」
と言った時、美蘭が明らかにガックリしていたような気がするが気のせいだろう。さらなるスパルタ教育のアメとムチかもしれないと蛍は勘ぐった。
(こっちは相変わらず報われない恋してるの、美蘭。蛍は自分のことは本当に鈍いのじゃな)
「でも、すごく綺麗。ありがとう。ブレスレットを早速付けようっと」
そこへ母がお茶とケーキ持って戻ってきた。
「やっぱりいいお茶にしないと。あら? 蛍も綺麗な石をもらったのね。そういえば、お父さんにはお土産ないの?」
「あっ……完全に忘れてた。あとは高温石英たくさん採れたから見繕う!」
「相変わらず抜けてるな、蛍は」
美蘭の一言に皆で笑う。今年はいろいろと楽しいクリスマスになりそうだ。
(うーん、地学室にはあの禍々しい気配の石は無かった。今までは川の水で抑えられてたのが無くなったから気配は強くなっているはずなのじゃが。誰かの家に持ち帰られたか? 悪影響出なければ良いのだが)
魚川だけが少し心配していた。
〜第四章 完〜
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