第5話 邪悪な先輩、常識的ないとこ
「よぉ、魚川君から話は大体聞いたぜ。お前、珍しく優しいな」
帰りが遅くなったので、魚川くんと美蘭とは部屋でSKYPAを使って話をしていた。便利な時代だと蛍はつくづく思う。母親の学生時代はパーティーラインという似たようなサービスがあったが、料金が高くて誰も使わなかったなんて話を聞いていた。
「珍しいは余計。翡翠の帯留めは見たいから。やはり日本産の本翡翠かなあ。貴重だよねえ」
「で、翡翠の帯留めってどんなのだ?」
「写真を送ってもらったけど、なんせモノクロだからね。翡翠だから緑が一般的だけど。紫のラベンダー翡翠やら、白と緑のコントラストを生かしたデザインとかいろいろあるかならあ。でも、写真の感じだと緑色なのかな」
「写真、俺にも送ってくれ。補正アプリで解析できるかもしれない」
『わしもこのスマホで解析してみる』
最近の神仙界はハイテクだ。っと、感心するその前に蛍は美蘭に写真を送信した。
「うーん、確かにモノクロで画質も悪いな。これで名乗り出た男性って怪しいよな」
「デザインがシンプルな楕円形だから、この時代のメジャーなデザインじゃないの?」
『うーむ、そうとも言い切れぬぞ。拡大すると何か模様が見える。二人にも拡大して修正かけた写真を送信する』
さすが一万年生きた魚だけある。仙人補正とでもいうのか。
そうして送られた修正写真には確かに何かの模様が見える。花の模様を彫ってあるのか。そういえば帯留めの写真を検索したら花をかたどったものもあったと蛍は思い返していた。
「確かに菊の花みたいなものが見える。時代からして菊花のデザインあたりだね」
「じゃ、ツルッとした帯留め持ってきたらハズレだね」
「とりあえず、その後輩の七海ちゃんの安全はある程度保証できたのかな?」
「まあ、そうかも。あとは明日、本人からも情報集めよう」
「なんだか、俺たちが帯留めを捜索しているみたいだな」
「そうかもしれない。でも、そうしないと七海は次から次へと騙されそうでねえ。他にも名乗った人がいたって。全員、中年男性だったというから私ですらわかる怪しさだが」
「うへえ。お前が危機感持つって相当だな。それはどうやって断ったのだ?」
「帯留めの手がかりを翡翠と書かずに『緑色の石っぽいもの』とぼかして書いたから。七宝焼きなど回答してきたのは弾いていったと。最終的に三人が残ったとか」
「偽物と言い切れないものが残ったわけか。って、三人も会うの?!」
「そうなの。何も考えてないよね」
「それは俺の在校時代の台詞だ……」
「七海ほどじゃないよ!」
『まあまあ、二人とも。確かに女子高生一人では危なっかしいのう。蛍のようなガサ……、いや用心深さがあれば別だが』
「魚川くーん、紙じゃないヤスリで研がれたい? それともハンマー一発で外界に出たい?」
『い、いや、普通の女子高生はザックとハンマーは携行しないぞ』
「だって、いつどこで化石に巡り会えるかわかんないし」
「でも、蛍の石を見る目と扱いはひどいだろ。魚川君みたいな大当たりはたまにひくけど。
とにかくあの石の墓場はなんとかしろ。せめて価値のない欠片はゴミに出せ。水晶は見栄えよく磨け。木っ端微塵の化石は諦めろ」
「ミラ兄まで加勢してやな奴だなあ。石はちゃんとした形に整えようと思って保管してるだけだよ」
「そのセリフ、もう何年も聞いてるのだが、一向に進んでないし犠牲者ならぬ
「と、とにかく明日は七海と落ち合ってからいろいろ聞き出そうよ」
そうやってわあわあしていたら、階下から蛍の母の声が聞こえてきた。
「蛍ぅ。美蘭君達と長電話はそろそろ止めなさい。それにお風呂冷めるわよ! ガス代がもったいない!」
「はーい、はい。じゃ、今夜はここでお開きね。じゃ、また明日ね」
(とりあえずヤスリは回避できた。両親や親類はまともなのに、どうやったらこんな鈍くて大雑把な子に育つのだ? そう言えば昼間の蛍の心の中に出てきた叔母さんとやらの影響か?
でも、母親には敵わないようじゃな。母親に協力を頼めば良かった気もするが、心の声が聞こえると怯えたり卒倒する人間も多かったから難しいのう)
魚川は安堵しつつも、不安が拭えなかった。
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