4話 俺の決意
俺は
鼻を強く押さえながらセシリーに目を向ける。
「随分と盛大に殺ったな‥‥‥」
「ヒロト様が戦えないのが悪いのです」
目を瞑りながらプイとそっぽを向くセシリー。
「俺のせいなの‥‥‥?」
かく言うが恐らく今のは、俺に自分の実力を見せるためにやったのだろう。"私はあなたよりできる子です"っていうアピール。そんな事しなくたって、セシリーが俺より強いことは分かり切っていたというのに。
とにもかくにも、俺が戦闘系の
「‥‥‥ええ分かりました。
セシリーは呆れ顔だった。
「賢明な判断、どうもありがとう。それに、セシリーほど強い
俺は笑むが、セシリーは首を横に振った。
「私の
俺は首を傾げた。それのどこが強力じゃないと言うのだろうか。攻めてくる相手といえば、勇者を筆頭とする人間が普通だろう。刻まれたら堪ったものじゃない。ティアナだってすごい
「くれぐれも油断なさらないよう、お願い致します」
ふざけているとは到底思えない真剣な表情のセシリー。
「お、おう‥‥‥」
俺が油断しようがしまいが、変わることじゃないのだろうけれど、反射的に反応してしまった。
「帰りましょう、お夕食の準備がございますので」
「‥‥‥ああ、そうだな」
こうして俺たちは、屋敷に戻るのであった。
* * * * *
俺は驚いた。なぜなら――
「お帰りなさいませ」
ティアナが出発時と全く同じように、玄関に行儀良く立っていたからだ。それも、笑顔を絶やさずに。
「お前‥‥‥、今の今までずっとそこに立っていたのか?」
「まさか。鑑定
機械なのかってくらい綺麗に頭を下げるティアナ。
「あ、あぁ‥‥‥」
忠誠心に対するその笑顔が少し怖くも感じたが、その一方で俺は感心した。ティアナの言う鑑定
そうでないにしても、会得している
敵対する人間であり、あまつさえ何もできない俺が空席となった幹部に就任させられて、こいつらは相当不満のはずだ。それでも
セシリーは"魔王様の命令だから"と言っていた。魔王が命令すれば、あの
魔王軍幹部‥‥‥。俺には想像以上に疲れる役職みたいだ。
「私どもはお夕食の準備に取りかかりますので、ヒロト様はごゆっくりお待ちください」
ティアナは俺を居間へと促した。俺は頭を掻きながら、それに従った――。
――キッチンにて。調理をするティアナとセシリー。
「それでセシリー。ヒロト様のご様子は如何だったの?」
「ええ、本当に守りしかできていませんでした。筋力も低いです。戦闘系の
セシリーはため息をついた。
「そう落ち込むことはないわ。きっとヒロト様にはすごい力があるのよ」
「あの方のステータスを鑑定してみましたが、本当に
「魔王様が何のお考えもなしに、人間を幹部として務めさせるはずがないでしょう?」
その言葉にセシリーはしばらく黙った。確かに、これは魔王様のご命令だ。あの日、あのようなことがあって、悪しき人間を幹部として据えることなどあり得ない。何か理由があるのだろうが、ヒロトはあまりに弱すぎる。
「そうですけど‥‥‥、
――俺はまた、ソファーに寝転がっていた。やはりこれが一番だ。前世の当時は、もうこれほどのんびりする日は来ないだろうと思っていた。だが俺は今、居間でのんびりしている。あ、ダジャレのつもりで言った訳じゃないからね? シンプルに素直な気持ちね。
異世界に来てからの三年間だって、まぁワクワクしてたのは確かだよ? でも、さすがに疲れてしまった。修学旅行だって三泊四日程度なのだから、三年間なんて飽きてもおかしくない。そりゃあ、こういうのんびりを求めるさ。
「ヒロト様、お夕食の準備が整いました」
ティアナが俺を呼んだ。俺はゆっくりと起き上がって食卓へ向かう。
――すると待っていたのは、あまりに豪華なdinnerだった。
皿が数えて二十枚くらいありそうだ。サラダにスープに肉にケーキに‥‥‥。あれ? 宴でも始まるんですかねこれ?
「今日って何かの記念日だっけ?」
「ごく普通のお夕食にございます」
淡々と答えるセシリー。俺は苦笑い。これが日常なのか。やはりかなり疲れそうだが‥‥‥ダラダラできればそれで良い。
異世界転生から三年。人間だけど、俺は魔王軍幹部としてダラダラしてやる!!
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