episode4

「予想通り、出力全開だとこうなりますよ、ねぇ……」

「な、なんの音!?」

 そう思って私が振り向くと、今度はなぜか緋暁とその前においてあった机が吹き飛ばされ——いや。

 そして、前にあったであろう机の所在。それは程なくして気づく。

 教室の床に乱雑に散らばっている木片や鉄片。もはや木屑とかと言っても差し支えない大きさになったそれは、元々机であったものだった。

「え、どういうこと……?」

 そんな大災害が起こってる現状に理解できないでいると、アリアが口を開いた。

「……ちょっと、やり過ぎかしら」

「え、なんのこと?」

 私は何の気なく振り向こうとすると、なぜか動けなくなった。

「メリア……。あなた最高だけれど限度を知った方がいいわ」

「いやどう言うこと?」

 なぜか忠告された私はよくわからないけれど必要ないと思って異能を解除する。

「流石に上限突破していた異能の本気を馬鹿にしていたわ……」

「にしてもこれ誰がやったの?ひっどいよねぇ?」

「それは自虐ネタ?」

「……え?」

 私がのほほんとこの現状が起きている理由を聞くと私に対して突然非難轟々になった。私が何かしたって記憶ないんだけど……。

「みんな、とりあえず落ち着きなさいな。無意識でこんな災害を起こした彼女を避難しないであげてくれないかしら?八つ裂きにするわよ?」

「私はこんなことできる力ないし、最後の一言怖いんだけど!?」

「「「「「「「それを言ってる場合かお前は(メリアは)」」」」」」

 どうやらみんなが言うしそもそもアリアも言っているからこの最上は私がやったのだろうが……。

「私、今までこんなことなったことないんだけど」

「そりゃそうでしょう。前までは本気を出してなかったんでしょうし」

「そうだけど……そもそも今使ったの階級1だよ?」

「それを言ったら私は3よ?」

「え、どう言うこと?」

 全くを持って理解できなくなってしまった私の脳に理解を諦め、アリアに要約を全任せすることにした。

「階級って言うのはAが一番いいのと同じで数が小さい人ほど本来強い力を出せるの。ただ大抵は聖霊との適性が悪くて本来の力を出せないんだけど」

「そ、そうなんだ……。ってことは」

 私たちクラスメイトは一斉に緋暁の方に視線を向ける。

 私は彼の元に歩みを進める。意識を取り戻した緋暁は私を見るなり顔を引き攣らせていた。

「なんで私に対してそんな恐怖を抱いてるの?今まで私に散々脅してきたりしてきたよね?早くいつものように威勢よく私に接してみてよ。できるよね?今までそうしてきたんだから。あと——」

 彼に話す間を与えることなく捲し立て、最後にアリアに取り付けられた鉄の腕輪を投げ捨てて言う。

「次の時間は、実習だし。君は強いんでしょ?だからそれを私に存分に見せてよ。今まで言ってたじゃん。君に逆らえば『私は異能で丸焦げにする』って」

「……聞いてれば緋暁を馬鹿にしやがって」

 私が宣戦布告していると取り巻き、と言うよりはクラスメイトの男子ほぼ全員と女子数名が私を囲んだ。

「……何?」

「力に溺れて驕り高ぶるなんてクズの所業だな。そんなに強さを自負するなら俺らとも戦えるよな?逃げないよな?」

「……アリア、もし私が戦わない人に危害を与えかねなくなったら無理矢理にでも引き止めてくれない?」

「お前、何言って——」

「アリア、君の言うとおりだよ。私は『忌子』なんだ」

 私はそう告げた。周りの取り巻きは何を言い出しているのかわからない様子だった。

「ただ、今までひた隠しにしてきたのはそれで虐げられたくない。それもそうだけれど、もっと他の理由があった」

「ごちゃごちゃうるさいな!さっさと演習場に行くぞ!」

 私のことなんてお構いなしに引きずっていく。対して緋暁には最大限の処置を施していたが。

 そんな状況でも私は最後に告げた。

「まぁ、見ていてよ」

 ————


 演習場に半強制的に来させられた私。どうやら審判は担任が務めるようだった。

「先生!あいつが相手なのは気に食わないかもしれないですがもし俺たちが負けたら素直にあいつに勝ちを言ってやってください。これは俺たちの真剣勝負なんです」

「……わかった」

 嬉しいことに不正は働こうとはしていないらしい。こちらとしてもありがたい限りだ。

「見る限り、私一人に対して相手が30人くらいかな……。こっちが不利だなぁ」

「うるさい。俺らを捻り潰せるから緋暁を罵ったんだろ?」

「まぁ、そうっちゃそうだけど」

「……お前は絶対に許さない。何があってもお前に負けを与えてやる」

 存外相手は勝てると盲信しているようだった。今まで平凡に生きて『彼女』を解き放ちたくなくてどれだけ弱いと言われ続けてもいいと思ってきた。

 だけれど、もう私の正体を隠してる必要は無くなった。

「まぁ、さっさと始めようか……。最弱最凶の実力を見誤った罪、この手で断罪してあげないとね」

 そう言い合って、私とクラスメイトによる戦争の、開戦の狼煙は上げられた。

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