日記 蜘蛛

家の壁を這う小さな蜘蛛を見るたび、芥川龍之介の蜘蛛の糸を思い出します。

なんとはなしに毎回見逃し、地獄に落ちたら糸を登り放題だななんて無意味に思考をよそに飛ばしたりする毎日です。



この先は蜘蛛の糸のネタバレを含む駄文です。



彼は蜘蛛を見逃しチャンスを得ました。じゃあ地獄の他の人々はどうだったんでしょう。

なんの救いもなく打ち捨てられた血の池で溺れるその他大勢の罪人達。

本当は他にもいくらだって居たはずなのです。気まぐれで善行を起こした悪人なんてそれこそ何人でも。純なる悪の方が珍しいんですから。

じゃあ何故彼のもとに糸は垂らされたのか

たまたまです。仏様の気まぐれ。

上位存在のほんの戯れにあれ程までに振り回され、最終的にはまんまと落下していく。

本人からすれば途方もない悲劇です。

それを見て仏様がなしたのは嘆息一つ。

私は俗人ゆえに仏様の本心をうかがい知ることは出来ませんが、どうにも残酷な仕打ちだと感じてしまいます。

もしかして、かの文豪が伝えたかったのは助け合い精神の重要性ではなく、もっと薄暗い皮肉だったのかもしれません。


それこそ神しか知らない話ではありますが。

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