モテない俺の過去を変えろ!

エビフック

第1話 ハジマリ

東京都在住 横山健太 27歳、平凡に平凡を重ねたような普通の男、これから話すのはそんなありきたりでどこにもいる1人の青年に起こった不思議でハッピーな物語だ!

「...ジリリリリリィィィィィ!!!!!」

聞き慣れた世界で最も不快な音で目が覚め、いつもと同じボロい天井にふたつだけある、目のような形をした気味の悪い木目と目が合う。着ていたボロジャージを脱ぎ捨て、急いで支度を済ませると、バナナ1本で昼までの栄養を蓄え職場へ向かった。

職場というのはアパートからチャリで5分の小さな

DVDレンタル屋だ。健太はそこで雇われ店長をしているのだ。目的地に到着するとすぐにシャッターを上げ、一通りの開店作業を終え時計を見た。

…8時50分 (開店まであと10分か。)

健太は大きなため息をついて、口から大きな独り言を漏らした。

「俺の人生どこで間違えたんだろうなぁ、。」

…そう、健太は27歳にして女の手すら握ったことすらない大童貞なのだ。

だが、健太は決してモテない人生を歩んできた訳では無い。高校の時にはサッカー部に所属していたし

文化祭ではバンドを組んでステージに上がったし、

何より顔も悪くは無い。だが、そういう少しのスペックの高さが女の理想を高くし、変な余裕を作った故の童貞なのである。

そしてその日の営業が終わると、帰り道にあるスーパーで1番安いビールを手に取って、残り物の弁当と一緒に両腕に抱えてレジへと向かった。

「プシュッッッ」

家に着いて買ってきたビールを開けるとすぐに飲み干してしまった。そして余り物の弁当の硬くなったご飯をかきこみながらふと考える。

(高校生に戻りたいなぁ)

叶わぬ話だと1人で含み笑いをし、残りの弁当を食べた。そして何もやることが無くなったのでその日はすぐに寝ることにし、布団に入って目を瞑る。

(また次の日起きれば同じ日常の繰り返しなのか)

そんなことを考えているうちにすっかり意識は無くなっていた。

「…ジリリリリィジリリリィ!!!!!!」


今日も世界で最も不快な音で目が覚め、いつもと同じ気味の悪い木目と目が合っ、、、、

「あれ?ここはどこだ?」

そこはいつものボロアパートではなかった。

そして周りを見渡すと、大好きだった漫画、前日にでも食べたのであろう菓子のゴミ、ハマっていたグラドルのポスター、見覚えのあるモノばかりだ。

何が何だかわからずにぼーっとしていると、

〝ドタドタドタドタッ〟

「健太何時まで寝てるの!早く起きなさい!」

これまた見覚えのある光景だ。健太の母親である

京子が起こしに来たのだ。

健太は言われるがままに下のリビングへと行った。

テーブルの上に置いてある新聞紙に目をやると、その日付が今からちょうど10年前になっていた。


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