第7話 出張帰り

あれから2週間後。新が出張から帰ってきた。



「体調治った?」

「うん。安静にしていたら良くなったよ」

「なら良かった。ちょっと疲れてるからさ、俺先に風呂入るわ」



彼がお風呂に入っている間に、キャリーケースから溜まった洗濯物を取り出した。


すると、その中には赤い口紅がついたシャツが紛れていた。



「もうちょっと上手くやってよ……」



内心モヤモヤした。



「新、これどういうこと?」



いてもたってもいられなくて、お風呂から上がった彼をその場で問い詰めた。

でも、彼の態度はそっけなかった。



「悪い、疲れてんだよ」



彼は聞く耳も持たずに、私の手を振り払った。



「私、もう新のことわからないよ……」



涙声で訴えた。



「他に好きな人がいるなら、そうとハッキリ言って欲しい」



彼の中に私がいないことが寂しい。


「新の一番大事な人は誰?」



核心に迫る質問をした。



「私、新のこと、大好きだよ。

だから別れたくない。

他の女の人のところにいっても、私の元に戻ってきてくれるなら浮気も許す。

でも、新にとって、私が一番じゃないならもう別れたい。どんなに頑張っても新の心の中に私がいないんだったら、苦しいだけだよ……」



本心だった。



「俺も、恭花のこと大好きだよ」



でも、普段の態度がそう言っていない気がした。



ぎゅっと身体を引き寄せられた。

あぁ、そんなことをされたら心がすべて貴方に持っていかれてしまう。

でも、一時の感情で流されたくはなかった。



「……嘘だよ。もう新のこと、わからない」


彼のことを完全に信用できない訳じゃない。

でも、なんだか心がついていけなかった。


今は一人になりたくて、私は部屋を飛び出した。

新は追い掛けてきてもくれない。

それが答えな気さえした。



一人で夜道を歩いていると、雨脚が段々と強くなってきた。


「どうしてこうなるの……」


近くのコンビニに避難した時、バッタリ靖と遭遇した。


「靖……?」

「恭花。え、泣いてる?」


すぐに察した靖の優しさに、ますます泣きそうになった。


「どうしたんだよ」

「うーーー」


とりあえず店の外に出ると、抱き締められた。


「どうした?」

「寂しい……」


靖の優しさに、つい甘えそうになった。


「俺んとこおいで」


それでも靖は、なにも聞かずにただ優しく受け止めてくれた。

ダメだ、このままだと靖に気持ちが傾いてしまいそう……。

でも、気がついたら靖のマンションへと足が向かっていた。

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