第6話 靖視点
「恭花ちゃん今日休みだって」
バイトのシフトに入った時、店長にそう聞かされた。
「マジっすか」
彼女のことが心配になってバイト終わりにメッセージを送った。すると、恭花から電話が掛かってきた。
「靖……」
「どうした?体調平気?」
「うん……。今日はごめんね、心配してくれてありがとう」
「全然。余裕だったわ。ゆっくり休めよ」
「ねぇ、お願いがあるんだけど……」
「どうした?」
「アイス食べたい……」
そう言われて、一瞬ためらった。そういえば一緒に住んでいる男の存在を思い出した。
「はあ?彼氏に買ってきてもらえば」
「今出張だもん。動けない……」
大丈夫かよ……。
そんなことを聞くと、心配で仕方がない。
いつも目が離せなくて、放っておけない。
「ハーゲンダッツね」
ちゃっかり高いアイスクリームを要望されて、誰が買うか。とコンビニを出た。
「……買っちゃってるし」
気付いたら手に提げたビニール袋の中には、恭花切望のバニラアイスが入っていた。
彼女の部屋のインターホンを鳴らすも、一向に返答がない。
部屋の扉にビニール袋を掛けて帰ろうかとも思ったけれど、アイスが入っているから溶けてしまうことを危惧した。
念のため、扉が開いているか確認すると、解錠されたままになっていたので勝手にお邪魔することにした。
「恭花〜」
彼女の名前を呼んだけれど、反応がない。
奥の部屋まで行くと、ベッドで横になった彼女の姿があった。
「……寝てるし」
恭花に近付いて、寝顔を暫く見つめた。
すやすやと眠る彼女。
無意識に唇にキスを落として、我に返った。
なにやってんだ、俺……。
サラサラした髪を撫でた。
なんで俺のものじゃねーんだろう。
ふとそう思った時、ピリリリと携帯の着信音が鳴った。
ディスプレイには、「新」の文字。
俺は、既に溶けかけたアイスクリームを冷凍庫の中に突っ込んで部屋をあとにした。
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