第7話 狩人ギルド

 街に着いたチカラたち。門番さんに不審者扱いされそうだったけど、レナとシーナが何かを見せてチカラの身元を保証すると言ったら、敬礼しながら通してくれた。


「2人ってさ、ひょっとしたら何処かのご令嬢だったりする?」


 チカラはそう思って聞いてみたら、


「うーん、その辺はまだ言えないかな?」

「まだまだ信頼関係が足りない!」


 と2人に言われてしまったチカラ。それもそうかと納得したが、それなら何でここまで面倒を見てくれるんだろうと考えてみる。


「ハッ! 2人ともひょっとして俺の体が目当てかっ!?」


 チカラが思い付いた事を2人に言うと、


「「んな訳あるかーっ!!」」

 

 とちから一杯否定された…… ちょっと落ち込んだチカラだった。

 そうこうしている内に狩人ハンターギルドに着いたようだ。チカラはその建物を見上げた。


「思ったよりも大きいんだな」


 チカラがそう言うとレナが


「この街に無くてはならないギルドだからね」


 と言い、シーナは


「でも高ランクの狩人ハンターが少ない……」


 と教えてくれた。


 チカラたち3人はつれだって中に入った。

 

 中に入るとレナとシーナを見た狩人たちが声をかけてくる。


「おいおいレナ、変な男を連れてるな? 誰だそいつは?」


「ゲイン、この人はゴブリンにやられそうになってた私たちを助けてくれたのよ。田舎から出てきて狩人になりたいってこの街を目指してた途中だったらしいの。だから私たちがお礼を兼ねてギルドまで案内したって訳」


「はーん、そうか。だがそんなに強そうには見えないけどな?」


「ゲイン、それは貴方には関係ないでしょ。本人が狩人になりたいって言ってるんだから、余計な事は言わなくても良いのよ」


 2人のそんなやり取りをシーナは黙って見ている。


「あれ、ほっといて良いのか?」


 俺がシーナに聞くと、シーナはコクリと頷き言う。


「問題ないわ。だって、ゲインはレナの実の兄だから」


 と衝撃の事実を淡々と俺に告げたシーナ。ふむ、ここは俺も黙って見ておく事にしよう。兄妹喧嘩に巻き込まれるのはゴメンだからな。


 そう思ってたのにレナの兄上から声をかけられる。


「おい、そこのお前。俺はCの狩人のゲインだ。うちの妹を上手く騙したみたいだが、俺は騙されないぞ。ちょっとこの先の訓練場まで来いよ。俺がお前の化けの皮を剥がしてやる」


 いやいや、騙すも何も先ほどレナが言った通り、俺は道を知らないから二人の好意でココまで案内してもらっただけなんですけど!

 俺が内心でそう焦っていたらレナがゲインを煽るように言う。


「ゲイン、止めた方が良いわよ。Cの貴方はこのギルドじゃ最上位だけどチカラには勝てないわ」


 いや何を根拠に言ってるのかなレナは…… 俺は戦闘能力は皆無だぞ。


「ふん、レナ。お前は実の兄である俺よりもこの男の方が強いというのか? そんな事はあるかっ!! 着いてこい、チカラとやら!」


 あ〜…… これ断れないやつかな? 俺は静観していたシーナを見る。するとシーナは親指を立てて首を切る仕草をした。

 いや、ヤれって…… 何を言ってるのかなこの娘は?


 仕方なくレナの兄であるゲインさんに着いていく。後ろからゾロゾロと野次馬たちも着いて来ている。


 っていうか俺は背中の荷物オオカミを先に降ろしたいのだが…… シーナの魔法で見えないから誰も俺が荷物を背負ってるとは思ってないようだ。

 まあ、両手が空くように縄で括りつけてるから良いんだけどな。


 ってゲインさんってCって言ってたよな…… やべぇじゃん。Cから3段階に分かれてて、その真ん中って事は狩人としても一流に足を踏み入れてるって事だよな……


 うん、信じてるぞ、靄がくれた特典受け流しよ。


 俺は内心でビクビクしながらもゲインさんに着いていく。歩くこと2分で到着した場所は高校の運動場ほどの広さがあり、そこかしこで狩人たちが自主練したり、おそらくはベテランさんに指導してもらったりしていた。そんな中でゲインさんが大声を上げた。


「みんな、訓練中に悪いが少し場所をあけてくれ。今から妹についた悪い虫を退治するから!」


 ゲインさんの言葉に一斉にコチラを向く訓練中のみなさん。その目が俺を捉えると同情するような眼差しに変わった。中の一人がゲインさんに声をかける。


「おい、ゲイン。勘弁してやれよ。レナちゃんがいつものお節介をかいただけなんだろ?」


「うるせぇ! チョーラン。口出しするな。そのレナがコイツが俺よりも強いって言うんだよ。だったら試すしか無いだろうが!」


 俺は心の中でチョーランさんを応援する。もしや長ランが名前の由来なのかと思った事は内緒だ。


「ふーん…… レナちゃんがな。まっ、そういう事なら口出しは止めておくか」


 長ラン! 諦めが早すぎだぞ!!


 俺の心の声が届く筈もなく…… 俺は訓練場の真ん中あたりでゲインさんと対峙していた。


「フッフッフッ、そうだな。俺に勝ったらランクCの権限でお前のランクをDに推薦してやるよ。まあ、万が一もそんな事はあり得ないがな。そして、俺に負けたならこの街から出ていけ。いいな!!」


 俺の意見は…… うん、俺も少しだけ意地というものがあったようだ。俺はゲインさんの言葉に反論する。


「ランクCのゲインさんに勝ったならC+にしてもらわないと割に合わないですね。負けたらこの街を出ていきますよ。それでどうですかね?」


 丁寧な口調を心がけながらもゲインさんに対して煽っているかのような言葉が俺から出た。チラッと見ると何故かシーナちゃんが頷いていた……


 魔法使いだと思ったけどちょっと過激な娘なんだな……


 俺の言葉にゲインさんが答えようとした時に……


 その人は現れた……


 

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