第6話 兎に角、街に

 それから、2人と少し話をして大体の事を理解したチカラ。


 ここはベルワース帝国の辺境で、この森は【獣魔の森】と呼ばれている事。

 今いるのは森の入口部分で、弱い魔獣や魔物が多いので低ランクの狩人ハンターがレベルとランクを上げる為に通う場所だという事。

 狩人ハンターとは、魔獣や魔物を狩って生計を立てる者で、ギルドに登録する事でなれる仕事だという事。ランクは下から、G-F-E-D-C-B-Aとなっている事。Cランク以上は【C-・C ・C+】という風に更に3段階ある事。

 Gランクは実質は狩りに出られずに、基礎訓練を強いられる事。Fランクは先輩のDランクやCランクが付き添う事で狩りに出られる事。Eランクで初めて自分だけ、又はパーティメンバーとだけで狩りに出る許可が得られる事。

 レナとシーナの2人は共にEランクでパーティを組んで活動している、まだ駆け出しの狩人ハンターだという事。2人とも同い年で16歳らしい。

 この森の入口から辺境都市であるガードナーは徒歩30分でたどり着ける事。

 などを教えて貰った。お礼にとチカラが差し出したアケビによく似た果物を出すと、2人から、


「えっ!?」


 と絶句されたので、チカラはもしかしてダメなヤツ? と顔に出した。


「あの、ソレってアクビの実だよね……」

「食べるとその場で寝てしまって、食べて寝た者は、寝てる間に森の魔獣のお腹におさまるっていう……」


 やらかしたー、とチカラは心の中で盛大に声を上げるが、そこは顔には出さずに慎重に言ってみる。


「いや、薬として売れたりしないかなー…… 何て思って……」


「うん、売れるわよ。1つで銀貨5枚になるよ。3つあったら銀貨15枚だね」


 とアッサリと教えてくれた。が、お金の価値が分からない事にもたったいま気がついたチカラは2人に素直に聞く事にした。


「あの、俺の故郷とお金の単位が違うみたいなんだけど、ちょっと教えてくれないかな?」


 その質問にはレナが答えてくれた。


「いいよ。ベルワース帝国だけじゃなくて他の国でも通用する大陸共通通貨が一般的で、小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨かな。その上もあるけど、私たち狩人には関係ないかな。それぞれ10枚で上の通貨1枚になるの。小銅貨3枚で薄いお肉の串焼き1本か、とても固い小さなパンが1個買えるかな。宿屋は一番安い所は銅貨5枚で泊まれるけど、オススメはしないよ。そうね、せめて小銀貨2枚の宿に泊まるのをオススメするわ。普通に一ヶ月生活するなら最低、銀貨七枚はいるかな? ごめんね、その辺は人それぞれだから曖昧だけど……」


 と教わり、頭の中で日本円に換算するチカラ。


小銅貨 10円

銅貨  100円

小銀貨 1,000円

銀貨  10,000円

小金貨 100,000円

金貨  1,000,000円


 ぐらいかな? それだと一ヶ月の生活費は一人だったら銀貨四枚〜五枚あれば行けるよな、と考えてからハタと気がついた。


「えっ、? この実って銀貨5枚で売れるって言ったよな!?」


「そうだよ、アクビの実は森のかなり奥にしか無いから、取りに行ける狩人ハンターも少ないのよ。貴重な薬になるから、その単価なんだよ。因みに、そこに生えてるアルムの葉は初級回復薬の原材料だけど、1枚で小銅貨2枚だよ」


 おお、何で5個も食べてしまったんだ、俺。と心の中で悔やむチカラだが、ふと自分が背中に背負っているオオカミの値段が気になった。


「あの、もしも知ってたら教えて欲しいんだけど、このブラッディ・ウルフってどれぐらいの金額になるのかな?」


 しかし、それには2人とも首を横に振った。


「ゴメンね。私たちも駆け出しだから、ブラッディ・ウルフの買取金額は分からないの」


「そ、そうか、いやコッチこそゴメン」


 そう謝るチカラにシーナが言ってきた。


「約束は街の入口までって話だったけど、どうせなら最後まで面倒を見てあげる。街に入るのに身分証明書が無いからチカラはお金を取られる事になるの。小銀貨3枚ね。それも持ってないでしょ。それに、その荷物を担いだまま狩人ハンターギルドに行くと絶対に絡まれるから、私たち2人が一緒に居る方がいいわよ。って、その前に魔法をかけてもいい? その荷物を見えなくして上げるわ」


 おお、そんな魔法があるんだ! とチカラは思い、借りばかり増えるなぁとは思ったけど、素直にお願いした。


「闇と光のはざまにて対象を消さん、不可視化!」


 シーナが魔法を唱えると、荷物の重さはあるが、確かに見えなくなった。凄い魔法だ。


「ギルドに着いて、買取解体倉庫に行ってから魔法を解除するね」


 俺はついてるなぁとチカラは思っていた。出会いは不審者扱いだったけど、本当に面倒みの良い少女2人に出会えた幸運を、黒いもやのお陰だと思い感謝したチカラだった。   

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