第4話 能力を少し理解した

「えっ!? いや、なに? 今の?」 


 チカラが自分のした事にビックリしている間に他のオオカミは逃げ出したようだ。

 

「ん? 何でそんな事が分かるんだろう?」


 チカラはオオカミの気配が自分の周りから消えた事に気がついたのをいぶかしく思ったが、取り敢えず絶命した3頭のオオカミを見に行った。


「おおー、確かに死んでいるな。異世界の定番だとコレって売れるんだよな…… でもアイテムボックスなんてスキルも無いし、入れ物も無いしなぁ……」


 途方にくれたが、取り敢えず担げそうな1頭だけを担いで再び歩き出したチカラ。進むと小川を見つけた。


「うーん、生水か…… 腹壊すかなぁ……」


 そう考えたチカラだったが、喉の乾きもひどいから、飲む事にしたようだ。


「おおー、冷たくて美味いな。飲んで良かった。ついでにちょっとだけここで休憩しよう。そういや、オオカミを3頭も倒したんだから、レベルアップしてんじゃね?」


 そう言ってチカラは自分の能力を確認する。


「能力値表示!」


 今度は自信満々でそう言うチカラ。


 

名前:チカラ

年齢:18

種族:人

位階レベル:24

体力:290

魔力:290

攻撃:145(武器なし)

防御:145(防具なし)

技能スキル:体術(1)・状態異常耐性(2)・気配察知(2)

特典:受け流し


「メッチャ、上がってるーっ!! スキルが無かったのに増えてるし!」


 自分の能力を見たチカラは興奮していた。凄くレベルアップした事とスキルが増えた事に。


「そうか、この世界だと経験した事に対応したスキルを獲得出来るんだな。それにしても獲得するのが早すぎな気がするけど…… 人に会ってもスキルの件はそれとなく聞いて確認してみよう」


 それからチカラは欲しいスキルが手に入るかもと、手を動かして空間に物を入れる動作を繰り返す。が、徒労に終わったようだ。


「あ、やっぱりアイテムボックスなんてのは無理なんだな…… 今まで手を動かしていたこの無駄な時間は……」


 実は明確なイメージを持って実行していれば獲得出来ていたのだが、チカラは安易な考えで出し入れ動作を繰り返していたので獲得出来なかったのだが、それには気づく事なく、ハアーとため息を一つ吐いて、食べ物を探そうと辺りを見回すチカラ。けれどもそう簡単に見つかる筈もなく、空腹感は増していく……


「ああー、この空腹感も受け流せたらなぁー」


 そう独りごちながら、腹に手を当ててからその手を左にヒョイッと振ると


「ウェッ! 嘘だろっ! 空腹感が消えたよ……」


 チカラの感じていた空腹感がなくなっていた。その事に呆然とするチカラ。


「えっと、本当に受け流せたけど、空腹感が無くなっただけで、実際には何も食べてないんだから何かを食べる必要はあるよな…… 当たり前だけど」


 そう言いながらチカラは小川に沿って食べ物を探しながら歩き出した。歩きながらチカラは


「ありとあらゆるモノをと説明にあったけど、まさか感覚まで受け流せるとは思わなかったな」


 と、【受け流し】の力に驚いている。そして、尿意を覚えたチカラは試しにと、下腹部に手を当てて頭の中で尿と考えてから、左に手をヒョイッと動かすと、


「ウオッ、本当に出たよっ!!」


 大声を出して驚いた。

 チカラの動かした手の2センチ程離れた場所から薄く黄色い液体が飛ぶと共にチカラの脳は小便をしたあの感覚を伝えてきたのだ。


「こ、これは色々と検証してみないとダメなヤツだな」


 チカラは目で食べれそうな物を探しながらも、心の中では厄介なだけど便利な特典を貰ってしまったと考えていた。



 


 

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