第2話 黒い靄は語る

 ちからは困っていた。気がつけば知らない場所に居た事と、周りは薄暗く良く見えない事に。


「うーん、確かに教室にいた筈なんだが……」


 独り言を言って精神の安定を図ろうとしたちからに声が届いた。


『スマンのう、助けられなんだわい』


「うぉっ! だ、誰だ?」


 よーく目を凝らして周りを見回すちからの目の前に人型の黒いもやが見えた。


「もしかしてこのもやが?」


『そうじゃ、お主を助けようとしたんじゃが、力が足りずにのう…… 何とかワシの所には引っ張ってこれたんじやが、もうすぐその力も尽きるのじゃ。じゃから手短に説明するぞい』


「あ、ああ、わかったけど……」


 元々、カクヨムに異世界ファンタジーを投稿していたちからは今の状況に納得はしてないが受け入れる事にした。


『ウム。お主は巻き込まれて異世界に飛ばされる予定じゃった。そして、あの4人を呼び出した国と、あの4人に、いいようにこき使われてのたれ死ぬように設定されておった。ワシはワシの世界の子がそのような事になるのは許せなんだのでな、力を振り絞って助けようとしたんじゃが、力及ばず…… スマンのう。じゃが、最後の力を使ってお主はあの4人とは違う国に飛ばしてやるぞい。それと、ワシの力の一部を受け渡してやるぞい。何とかそれで生き延びるのじゃ。因みに、地球ではお主を含めてあの4人も存在を消されておる…… 全く、あの者共めが…… 時間じゃ、短い説明ですまぬが、何とか生き延びてくれい!』 


 それだけ言うと黒いもやは唐突に消えた。そして、ちからの視界も暗転した。


 気がつけばちからは森の中にいた。ちからは辺りを見渡す。一際大きな樹がある。


「ひょっとして世界樹だったりして、ってんな訳ないか」


 独り言を言いながらちからは更に言葉を出した。


「ステータス・オープン!!」


 シーン…… 一人で良かったとちからは心からそう思った。何も出てこなかったからだ。目の前に電子画面に似た何かが出ると期待して声を大にして言ってみたのだが……


「えーと、自分の能力を知る事は出来ないのかな? いや、待てよ。俺に合わせてくれてるなら…… 能力値表示」


 自分の書いてる小説の中の文言を言ってみるちから。すると、


「良し! 出たよ! 有難う、黒いもや


 

名前:チカラ

年齢:18

種族:人

位階レベル:1

体力:50

魔力:50

攻撃:25(武器なし)

防御:25(防具なし)

技能スキル:ー

特典:受け流し


 と礼を言ったチカラだが、自身の能力を見て言った。


「何じゃこりゃ?」


 どうやら自分の書いた小説の能力値表示とは違ったようだ……


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