②ユニコーンの生態(前)

ある村の乙女がユニコーンを手懐けたという噂が広まった。


ユニコーンは神獣とされ、滅多に姿さえ見ることはできない。


俺も今まで見たことすらない、かなりレアな生き物。


そんなユニコーンであれば、是非とも一目見てみたい。


そんな訳で、俺はその村にやってきたわけだ。






その村は、どこにでもありそうな小さな村だった。


都から遠く離れ、工業の発展から取り残されたような、でも穏やかで平和そうな村…なんだろう、普段は。


今は、出店が所狭しと並び、大勢の人が行き交っている。


なんだ?祭でもやってるのか?


俺は出店で買った肉の串焼きにかぶりつきながら、見て回る。


お目当てのユニコーンはすぐに見つかった。


村の中央に大きなテントが立ち、垂れ幕が掛かっている。


《見ないと一生の後悔、伝説の神獣ユニコーン! 》


なんという胡散臭さ。


「兄ちゃん!入るの?入らないの?後ろ並んでるのよ!」


もう帰ろうかと思っていると、入口のオバちゃんにせかされてしまい、すごすご入場する。


「はいよ、2000Gね。」


しかも、高いな…。それだけ払えば、飯が腹いっぱい食える…。


本当に《見ないと一生の後悔》なのか?今のところ後悔しかしてないが…。


テントの中は満員だった。


「世の中には暇人が多いな…」


自分もその一人だと気付かずに、肉を貪り食う俺。


前座のくだらないパフォーマンスや小噺が長々と続いて、少しうんざりしかけてきた時…


急にファンタジックな音楽の演奏が始まる。


音楽が最高潮に達した時、舞台奥からユニコーンに跨った若い女が現れた。


「まじか…」


呆然とし、俺は齧りかけの肉を落としてしまう。


あれは、本物だ。


多くのモンスターを見てきた俺には分かる。


あれは本物のユニコーンだ!


こんな場所で本当に見ることが出来るとは……



それから、女とユニコーンは舞台を何周かして、また舞台奥に戻っていった。


その時、俺は興奮のあまり気付かなかった。


「カーラ…」


隣の青年が女の名を呟くのを。

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