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林太郎のおじいちゃんが描いていた絵はどれも風景画ばかりだった。
人物の絵は一枚もなくて、動物を描いた絵も、猫の神様をのぞけば、一枚もなかった。
林太郎のおじいちゃんが描いた唯一の生き物の絵。
それが猫の神様だった。
この絵はいろんな意味で、林太郎のおじちゃんにとって、特別な絵だったようだ。
実際に猫の神様はほかのたくさんの絵とは別にきちんと傷まないように工夫がされて、保存されていた。
「林太郎くんはおじいちゃんに憧れて画家を目指しているだよね」と日和は言った。
「うん。そうだよ」と林太郎はいう。
最初は興味津々と言った感じで、林太郎の部屋を眺めていた三匹の兄弟の子猫たちはいつの間にか段ボール箱の中で眠ってしまっていた。
日和はそんな子猫たちを一度見てから、林太郎を見て、「林太郎のおじいちゃんは猫の神様っていう題名の絵を描いているでしょ? なら林太郎くんも一枚くらいは猫の絵を描いてみてもいいんじゃないかな?」と聞いてみた。
すると林太郎はうーんと言って、少しだけ考えて、それからなにかを言おうとしてから、やっぱりまた口を開かずに黙り込んでしまった。
開いた古い木の窓からは、とても気持ちのいい風が吹き込んでいる。
その風が、林太郎の部屋にある白いカーテンを小さく揺らしていた。
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