第8話 (第3話と第4話の間のお話☆大人向け)
湿った唇は柔らかい。昨日までの無理続きで荒れてたのも、治ってる。
まつげや、髪の先に、風に冷やされた湯気が雫を結んで、上気した頬や目尻を、ひっきりなしに伝う。
長湯で、端がとろけたような顔は、夜の緩やかな勾配の時間を越える途中のときに、
見せる顔とよく似ている。
…まだ、慣れない碧の身体を、なだめながら、ゆっくりと、押し入っていくとき、
一つになっている、今、俺達は繋がっている、と、いう思いが、俺の胸に食い込む。
「…もう、動いて、いい?」
尋ねる声はいつも掠れていて、ざまないな、と顔が火照る。
やっと薄く眼を開けて、頷くお前の頬は濡れている。生理的な涙だとわかってるんだけど、…切ない。
いとおしい。
できるだけ長く、このまま、繋がって、痛い程、碧を感じていたくて、碧に感じていて欲しい。
こみ上げる気持ちに、衝き動かされる。
昇り詰めそうになる碧自身を堰き止めて、自分も堪える。
エゴなんだ。判ってる。
碧の身体の深みを、ひたすら目指してる自分の動きは、もう、碧を労る余裕はなくて。
俺の出発した感情を見失わないでいて欲しいなんて、勝手な話。
だけど、溺れた人間みたいに、首から腕を離さないでいる碧は、唇を合わせると、やっと少し、だらしなく、微笑う。
その顔は俺を許してる。全てを。
強張りきった肩が僅かに緩むのに、内部はきゅうっと、絡みついてくる。
一瞬の、インターバルの後、もう、放出の快感は確実に俺達を捕えてしまう。
好きだ、という、きれぎれな呟きは、もつれ合って、汗に溶ける。
…もちろん、それで終わる筈はない。
泥のような眠りに陥ちるまで、何度も繰り返す。
「あつ…い」
碧が、焦れたように身をよじって、キスから逃れた。
気がつくと、俺は膝の上に碧を抱え込んでいた。
勃ち上がったお互いのものが、擦れ合って、長湯にほぐれた体に重くまとわりつく、鈍い快感。
「すっげ、欲しい…」
「…ここはまずいです」
「部屋、戻ろ」
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