第23話  アンナの思い

 長年、王宮で働いていた者の中には、前前王朝を知っている人もいて、その人達が、僕に王にならないかと薦めてきたんだ。


「いくら、おばあちゃんの国でも、僕はこの国には、何の愛着がないよ~」


 僕は困ったように、アンナを見て言った。


「タクトは、もうこの国と関わるな。お前は、黙って銀の森にお持ち帰りされろ!!」


「アンナ~」


 もと、王宮の侍従をやっていた人が

 アンナと話していた。

 アンナは、自分の身分をまあかした上で、僕のことを自分の婿になる相手だと紹介した。


「では、この国の王はどうなるんです?」


「自分達で決めたら、良いんじゃないのか?」


「長年のハルムの様の命令で、隣人を監視し合っていた密告の習慣が残っているんだ。信用は出来ない。急に明日から、贄の儀式が無くなったから平和が来たと喜べるか?

 若くて、ラルク王朝の血を引いてるなら問題ない。是非、そちらの青年に王になって貰いたいのだが。」


「だから、それはないって言ってるだろ!!すかポンタン!!

 タクトは、私と銀の森で婚礼を挙げるんて家族になるんだよ!!」


 僕は、アンナから家族なんて言葉が出てきたことに驚いた。

 アンナの家族は、パパさん一人だから寂しいのかな?


 アンナは、ラルク王朝と聞いて、考えが浮かんだらしい。


 僕には、こう言ったんだ。


「本当は、本家を継ぐのは、どうだって良いんだ。銀の森の一族の神の血筋の優越感なんてものには、反吐が出るくらい嫌いだ。

 でも、家を継ぐのは、私の義務なんだ。なら、せめて私は、両親のようにはなりたくない!!」


「アンナのママは、里へ帰ってるって聞いてるよ?」


「それは、世間体の話し。実は、生まれた時の私の容姿を見て、三賢人に不貞を言った奴がいた。プライドの高い母上は、怒って里にお帰りだ。父上も母上を愛していながら、とうとうヴァーレン皇国までは行かれなかった。私は、そんな父と母が歯痒くてならなかった。私は、そうはならないと決めている」


 えー!!

 アンナの出生に、そんなことがあったの!?


 逞しく育ち過ぎだよ、アンナ。

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