第19話  精気を抜かれた僕

「やい!!ヒューイッドを返せよ!!酷いことをして!!」


 僕は思わず叫んでいた。


「何のことだ!?」


 アンナも言った。


「ヒューイッドから、精気を抜いたのは、こいつじゃないぞ!?」


「だって……!!」


 僕に、魔族の区別なんてつかないよ。

 でも、人間との違いが分からないんだ。

 美形というのか!?違うというのか!?

 人間に見えなくもない……でも、漂う雰囲気が僕たちと全く違っていた。


 アンナの一族の人に似ていた……なんて、銀の森の人に言ったらフルボッコの案件だ。

 でも、ハルムは間違えなく魔族だ。

 人の精気を吸って、何百年と生きる魔の一族だ。


「お前が、この国を乗っ取った時のことを教えてもらおうか」


 アンナは、手に火をかざしてハルム王の王座の所に行った。

 ハルムの顔色が変わる。


「火の魔法が使えるのか!?」


「ああ、風はもっと凄いぞ。言っとくが、大地と水も使えるから、この王城を壊すくらいは、私にとっては、朝飯前の事だ」


「じゃあ、そっちの坊主は役立たずだな」


 ハルムは、僕に狙いを決めてきた様だった。


「「逃げろ!!タクト!!」」


 そんなに急に言われても~~

 僕は、エア・ボールを数発投げたんだけど、ハルムはすばしっこくって、難なく避けてしまうんだ。


「馬鹿!!空に逃げろよ!!」


 アンナが言ってくれて、やっと、逃げろの意味が分かったんだ。


「大将!!飛ばせて!!」

 僕は言った。

 風の大将がふわりと僕の身体を持ち上げてくれた時だった。


 僕の足に誰か触っていた。


 ハルム王がニヤリと笑って、僕を見ていた。


「タクト!!」


 身体中から、力が向けていく……


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