第18話  国王、ハルム

「さあ、行こう!!」


 アンナが、手を差し出してきた。

 僕は、アンナの手を握り返して言った。


「でも相手は、魔族だよ!?なんで、魔王でもない奴がこの国の王になってるのかなぁ?」


 僕は、飛び上がりながらアンナに聞いてみた。


「時系列で行くと56年前にラルク王朝が滅んでるんだ。そしてこの国の王は、魔族になった。リムジットは、最後の直系の王女として贄にされたんだ。ハルムという奴は、ずる賢いな……表だっては出て来ないで、裏方に回って力を貯えていたんだ。人の世界の王になって、民を贄にするなど許せない奴!!」


「魔王を復活させようとしてるって言ってたよ?」

「フン!!あれは、魔s族が力をつければ何度だって、復活するさ。実体のあるハルムの方が退治しがいがあるな」


 僕たちは、地下牢を飛び出て暗黒神殿の外に出た。


「風の奥方、王は何処にいる?」


 <塔の一番高い部屋ですわ>


 僕は、アンナと風の奥方の息の合い方に驚いた。

 精霊の中で、最高位の奥方……

 彼女の力とアンナの魔力があれば、大抵のことが出来そうだよな~?


 僕は、アンナに導かれる様に、塔の天辺に飛んで行った。風の大将が全然役に立ってないよ~


「奥方、窓を開け放て!!」


 <承知ですわ>


 僕たちを、塔の屋根に置いて風の奥方は、アンナの指示に従った。


 塔の一番高い部屋は、風が吹き荒れた。


「誰だ!?」


 王の座に、色白の銀髪の男がいた。


「若いな、しかもディン族か……」


「アンナの一族の人に似てるね?」


 僕がそう言ったら、アンナは嫌な顔をした。


「ディン族は、人間に近い種族なんだ。奴の外見は……だな」


 アンナは、大きく溜息をついた。


「この風は、お前たちの所為か?」


 窓の所に立っていた僕とアンナを、ハルム王は見つけたようだった。


「上手く、人の世に隠れていたようだな」


「うるさい!!東方のものか!?」


「あったり~!!お前、魔族のくせにその外見は見てくれだけか?」


「生まれつきだ!!何の用だ!?」


 魔族のハルムは、ディン族という人間に良く似たタイプの魔族

 だった。


 思い出したよ。

 ビューイッドから精気を抜いたのも、こいつの仲間だ!!


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