第13話  捕縛された、僕

 他の客が誰も居なかったので、僕は飯屋の大将に話しかけた。


「ねえ、何で昼時なのに、こんなにガラガラなの?この国の人たちに活気が無いのはなぜ?」


 大将は、驚いた顔で、僕を見てきた。


「何者だ!?」


「しっ!!」


 僕は、大将の口に人指し指を立てた。


「この国は、病んでるみたいだよ。何かあったの?」


「坊主は、光の神殿のまわし者か?」


「違うよ。どちらかというと、追い出された方だよ!!それでね、僕の身内がこの国の出身だと分かったんだ。だから、来てみたし、この国のことを知りたいんだよ」


「それは悪いときに来たな。この国は、魔王の信仰を東方の神殿に止められ、魔王も滅んだ。

 今、魔王を崇めていた祭司達は、魔王を復活させようと、躍起になっている。魔王の暗黒神殿では、生きながらにして、心臓をえぐり出され、捧げられる儀式が毎日行われているんだ。皆が、暗い顔をしてるのは、そのせいだ明日は我が身かも知れないのだからな」


 げげげぇ……生きながら心臓をえぐり出すって……

 グロイ……ホラーだ!!


「あの、暗黒神殿て何処にあるの?」


「王宮だよ。今の祭主は国王様だ。おっと、これは内緒だぜ。外部に知れると俺が暗黒神殿送りになってしまう」


「王が!?祭主!?魔王はやっつけたはずなのになにいぇってるんだよ!!この国は!!復活なんて駄目だよ!!絶対に!!」


 僕は大きな声で叫んでいた。


「馬鹿だな。もう遅い」


「!?」


 いつの間にか僕の周りは、警備兵らしき人々で固められていた。


 しまった……

 つい、暗黒神殿の事で周囲が見えなくなっていた。


 僕は逃げようとして、入り口の兵隊さんに向けて小さなエア・ボールを投げた。


 一瞬怯んだ兵隊さんの脇をすり抜けて、外の出たんだ。

 風の大将を呼んで、空に逃げるつもりだったけど、外にも兵隊がいた。

 店から出て来た所を、確保されてしまった。


 こんな事なら、特大のエア・キックの方が良かったかな~?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る