第11話  僕の名字

 ヒューイッドを火葬にした後、僕は精霊の風の大将に頼んで、故郷のランス村に戻ったんだ。

 でも、ランス村は何処にもなかった。

 あとあと聞いたことでは、魔族が、襲った村ということで、火の魔法使いによる浄化が村全体に行われ、開拓された土地は、もとの状態まで戻されたそうなんだ。

 殺された人も、魔法使い達が弔ってくれたそうだけど、もはや、何処が、

 何処だか分からない。


 仕方なく僕は、空中からヒューイッドの骨粉を撒くことにした。ここなら、寂しくないよね、ヒューイッド。

 ヒューのパパもママもいる。

 僕のパパもママもいる。

 僕は、しばらく親分にに飛ばせてもらって、空中から祈っていた。


 そして思い立ったように親分に言った。


「大将、シードック帝国って知ってる?」


 <建国1000年くらいの新国だな。魔族の蔓延っていた地域に、突如建国された国で、建国から色々なことが言われている国だ>


「何が変なの?魔族が人間と協力して国を造ったとか?」


 <いや、建国の王と王妃は、未来からやって来たという噂もある>


「え~!?」


 僕は、銀の森で用意してもらった旅人の服の下に、鎖帷子を着て、シードック帝国に行くことにした。


 思えば、これで僕は、名字無しになってしまったんだ。

 魔王になったラミネス姓は、当然没収だし、ロイル姓なんて名乗ったら、アンナの一族からフルぼっこだ。

 かといって、ランス村もなくなってしまった。

 昔は、姓の無い人もいたらしいけど、今は、名字の無い人はいないよ。

 だいたいの庶民でも、住んでる村や町を姓にすることが多いっていうのに!!

 ランス村のタクトゥールと名乗っても、そんな村は存在しないんだ。


 僕は、盛大なため息を着いて、リムジットの出生を訪ねるべく、シードック帝国へ向かった。

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