第10話  娼館での僕

 NO3のエリッタお姐さん、僕の服を脱がそうとして後ずさって行った。


「お風呂入る?」


 と、言ってきた。


 お風呂と聞いて僕は、うんうんと頷いた。


「銀の森の温泉も良いけど、西域風のお風呂も良いからなぁ」


「すぐに用意させるわ」


 姐さんは、そそくさと部屋を出て行った。


 やがて、僕のいる部屋に小さな沐浴所が作られた。

 僕は、裸になって、小さな浴槽に入った.

 姐さんがそっと、僕の背中を柔らかい布で洗ってくれた。



「聞いたわ。魔王を倒した勇者なんですってね?でも、綺麗な体をしてるのね。百戦錬磨の戦士って感じはしないわ」


「僕は、魔法使いなんですよ。それに魔王を倒した時には、神剣もあったし」


「そうなの!?」


 な~んて、このお姐さんは、とっても話し上手なんだ。

 直接僕に触れないように気を付けながら、それでも僕が不快にならないように……

 そんな時だった。

 突然の悲鳴が聞こえたんだ。

 NO1のイヴァンカ姐さんの部屋らしい。

 そこには、ヒューイッドがいるはずだ。

 僕は、嫌な予感がした。


 齢70くらいの老体が、初めてだからと言って、娼館に来てNO1を指名するかね~


 ヒューイッドは、残念だけど死んでいたよ。

 とっても、幸せそうな顔をしてた。


 イヴァンカ姐さんと4回目に突入する直前に、心臓発作を起こしちゃったんだって。

 わぁ……心臓にも悪いのか。今の僕は大丈夫だけど、気を付けないと。


 アルテアの神殿で、小さな葬儀をすませて、僕は故郷のリリエンハイムに向かった。


 その間も頭から離れなかったのが、リムジット魔族の血筋説だった。

 そもそも同じ魔族なら、なんで、リムジットが魔王に捧げられるんだよ。


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