第9話  魔族の血

「行くぞ~!!タクト、退院祝いと俺の誕生日祝いに娼館に行くぞ~!!」


 ヒューイッドは、昨日まで見かけ通りのお爺さんだったらしい。

 でも、僕の顔を見て本来の年を思い出してしまったんだろうな。

 急に元気になって、腰までまっすぐになってしまった。

 治療師さんは、奇跡だと言うし、これ以上ここ(治療院)に置いておいても若返る事は無いんだから、退院で良いんだって。体よく、老人を押し付けられた気になったのは、僕だけか?

 だって、ヒューイッドとは、同じ年には見えないし……

 もちろんヒューイッドが悪いわけではない。彼は、むしろ被害者だ。


「うぉー!!」


 と、謎の雄叫びを上げて、繁華街に着いたのは、夕闇に包まれた頃だった。


「僕は、良いからヒューだけ行っといでよ」


「タクトは!?話だと未だのようだが、いつまで大事にしてる気だ?お前は、勇者の家系なんだから、選り取り好みだろう?羨ましいぜ!!

 くそ~俺が本来の年ならこの娼館の女を皆ひーひー言わせて、娼館ごと買うんだがな」


 さすがに二年は、経っている。

 ヒューイッドは、自分の外見を受け入れてた。


 中身は、年相応だけどね。


「じゃ、支払いはタクトに任せるからな!!」


 アルテアで一番大きな娼館『ゾーイ』に入って行くと、ヒューイッドは初めてとも思えないほど慣れた感じで娼婦を読んで、NO1を指名していた。

 イヴァンカ姐さんという、NO1のお姐さんは、ヒューイッドを見て、初めビックリしていたが、そこは客商売人だ。

 直ぐにニッコリと笑ってヒューイッドを受け入れた。


 僕のところには、NO3のお姐さんが来てくれた。

 ドーリアの田舎の娼館と違って、アルテアの王都の一番大きな娼館のお姐さんだ。

 ムリヤリ事にいこうせずに、僕をまずリラックスさせようとイロイロな話をしてくれた。それだけで十分にお金を払いたくなる価値はあったけど、僕は、その気になれなかった。

 引っ掛かることがあったんだよ。


 銀の森の神官は、リムジットには魔族の血が流れてると言っていた。

 だったら、僕にも流れてるってことだろ?


 その気になって、僕の服を脱がせているお姉さんに向かって聞いてしまった。


「お姐さん、僕には魔族の血が流れてるみたいなんだ。もしかしたら、精気を抜いてしまうよ?それでも良い?」


 お姐さん、案の定固まってる。

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