第6話 主人公

私は生きていて、いつも思うことがある。

「果たして私は主人公に当たる人物なのだろうか」と。

この世界が誰かの手によって書かれた小説や漫画、映画や演劇の世界だったとしたら私は脇役なのか、主人公なのか。

主人公だとしたら私は悲劇の主人公だろう。太宰治作「人間失格」のような主人公ひいきなしの、例えるならやけ酒の後の暗い家路のような憂鬱で改善の一光なしの物語。

脇役だとしたら、もしかすると主人公行きつけの居酒屋によくいる痩せ男だけなのだろう。

私の書いたシスターは一部であったが主人公の命を救った。

あまり私はシスターのことを取り上げずに、名前もつけなかったが、どことなく私もこんなふうに書かれているのではないか、と思った。

しかし、私は私で脇役なりに主人公を演じている。

もしかしたらこの世界に生きる人々には一人ずつ、表現者がいるのかもしれない。

たとえ誰かの脇役だったとしても、私は主人公であることに変わりはない。

また、他人が主人公だったとしても、私にとっては脇役だ。

私の新聞の購買者たちも文章上はただの「購買者」で、脇役にも登らないだろう。

そんなドグマは、記事にするにはいい素材だった。

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