第5話 シスターの勘違い

ある国のある女の子は数年前に起きた戦争の影響を受けて貧しい生活を強いられていた。

その女の子は母の影響から教会のシスターになりたがった。

女の子は成長し、シスターとなった。

毎日欠かさず、母から受け継いだ教会で信じる神に祈りを捧げた。

道端で食に困っている人があれば、教会に招き、パンとシチューを食わせた。

それは自分の晩ごはんであったが、神の教えを愛する彼女は気にしなかった。

彼女がシスターになって2年が経った頃、隣国との戦争が起きた。

シスターは戦争が一刻も早く終わり、死者が出ないことを祈った。

戦争が起こって一ヶ月後に彼女の母が不治の病にかかり、余命百日となった。

シスターは母の病が治るように一日中教会に篭って祈りを捧げた。

さらにその一ヶ月後に彼女の父が軍に徴兵され、戦地へと赴いた。

シスターは父が無事に帰ってくることを願い、神の石像に縋りつきながら祈った。

しかし神は応えなかった。

シスターの母は病に侵された

父は戦争が終わって5年経っても帰ってこなかった。

教会の周りには死体の山ができた。

シスターは絶望し、何も考えずに祈り続けた。

ただ石のように、死者の眼をして祈り続けた。

神が好んだのは彼女では無かった。

ある男だった。

その男はなんでもできた。

神は単なる作家だった。

彼女はストーリーの一話に出てくる「主人公を助けたシスター」に過ぎなかった。名前も与えず、ただ「シスター」だけだった。

主人公の男はやがて政治家となり、世界を統一し、貧しい人を助けたとして話は終わった。

シスターは祈り続ければ、いまだに教会に貧さがゆえすがり付いてくる人たちが報われ、富に恵まれると勘違いしながら石の塊に両手を擦り合わせた。

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