第4話 無駄男
あるところに男がいた。
その男はとにかく無駄の多い男だった。
食べきれないほどのリンゴを買ったり、使いもしない香水を買ったり、遠回りな道を通ったり。
そんな男の友人は遂に見兼ねて、男に聞いてみた。
「何故お前は無駄なことばかりをするのだ?金も時間も体力も有限なんだぞ」
男は飲んでいた紅茶を置いて、穏やかな顔で考え始めた。
「なんでだろうねえ。」
それだけ言うと男は再びティーカップをもち、飲み始めた。
友人はため息をつき、もう一度聞いた。
「お前が無駄なことをするのは何か理由があるんだろう?俺は気になってしょうがない。教えてくれよ」
男は数分悩んで、思い出したかのような顔をして話を始めた。
「僕はね、無駄こそ最高の贅沢だと思うんだ。だって朝歌っている小鳥たちもあんなに可愛らしいのに、自然の中では常にギリギリで、無駄なく切羽詰まって生きてるんだ。僕は、僕ができる最大の贅沢を楽しんでいるんだと思うよ」
友人は納得した。彼の「無駄」は最大限人生を楽しんでいる証拠だったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます