第3話 朝刊

 時々、アニメや漫画、小説などの創作物を鑑賞しているときに驚くことがある。

私は、生まれつき変なところが多かった。「ジューシー」や「みずみずしい」など、味覚や感覚がどんなもの分からなかった時、テレビでそう表現されたものを食べて「これがジューシーなんだ」と自分の中で納得してないながらも定義づけをして思い込ませるということをしていた。

他にも、好きなものを「今日からお前の好きなものはこれだ」と自分で自分に言い聞かせたり。

自分は真っ白なキャンバスで、自分でそのキャンバスに「自分」という人間像を書き込んでいく。わかりやすく言えばそんな感じだった。

なので自分のことがいまいちわからない。これが好き、あれが好きなどはただの「そういう設定」であり、本心ではない。

話を創作物に戻すと、自分が気になって一時期だけ何度も聞く曲などに、自分のことが書かれていることが多すぎる、それによく驚かされるのだ。

いくつかの創作物を鑑賞して、アンバランスでアングラな「自分」という人格を確実なものにした経験もある。

とても不思議な話だが、無意識、無自覚にも自分のことは自分が一番理解しているのだろう。

私のような自分がよくわからない奴でも、何故か勝手に答えとなるものを手にしているからだ。

そして私はその創作物を書く側となっているのも面白い話だ。

今日も少ない購買者の元に私の文面が届く。

ある人はホットミルクを片手に朝刊として、ある人はスクランブルエッグを食べながら雑誌代わりに。

さあ次はどうしようか。

革命家は相変わらずパンを食べるし、バカはずっとコーヒーを飲んでる。寝ろよ。

そろそろ朝も来るので私は次の記事を書いているタイプライターから手を離し、自転車のハンドルを握る。

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