第8話 母の形見のペンダント
◇◇◇
「本当に良かったの?あんな国、滅ぼしちゃえば良かったのに」
フィガロの物騒な言葉にフェリシエは笑って首を振る。
あれからすぐにマドラス竜王国に戻り、今は王宮の温室でのんびりお茶を楽しんでいる最中だ。色とりどりの美しい花が咲き乱れるこの場所は、絢爛豪華で知られる竜王国の王宮の中でも、特にフェリシエのお気に入りの場所だった。
「もういいの。それに、今回はこれを取り戻しに行っただけだから」
フェリシエの手には、亡き母の形見のペンダントが煌めく。フィガロの瞳にも似た、美しい琥珀色の宝石がはまったそれは、母が遺してくれた大切な宝物だ。
「良かった!それ、ちゃんと持っててくれたんだね!」
フィガロがぱぁーっと顔を輝かせる。
「これ、知ってるの?」
「もちろん。だってそれ、僕がフェリシエの母上に渡したんだもの」
「……ええっ!?」
「フェリシエが生まれた時に、すぐに会いに行ったんだよ。この子を僕のお嫁さんに下さいって。そしたら君の母上に、『フェリシエはいずれ王妃になる娘ですから、王でない者には差し上げられません』って断られちゃって。だから僕、必ず王になるから、それまで預かって欲しいって言って、それを渡したんだ」
「これ、何があってもこれだけは手離さないようにってお母様が……。でも、叔父に取り上げられてしまって、ずっと探してたのよ」
「アイツか……やっぱり、アイツだけでも殺してくる」
立ち上がりかけたフィガロをフェリシエは優しく嗜める。
「だめ。フィーが私のために人を殺すなんて嫌よ」
止められたフィガロは不満顔だ。
「フェリシエは本当にお人好しだね。でも、万が一それが失われてたら、僕はあの国ごと焦土に変えて、見つけ出したけどね」
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