第6話 婚姻を祝う宴
◇◇◇
婚姻成立の知らせを受け、オリテント帝国では大々的に二人の婚姻を祝う宴が開催された。
寄り添って現れた仲睦まじい二人の様子に、オリテント帝国の貴族達はほっと胸を撫で下ろす。どうやら新しい竜王陛下はすっかりフェリシエ嬢に夢中らしい。これで、オリテント帝国は安泰だ。
「どうなることかと思ったが……これもフェリシエ嬢のおかげですな」
「まことに。余り物にも使い道はあると言うことですな。おっと!竜王国の王妃となられたお方に、これは失言でしたかな」
「まぁ、竜王陛下もまだ少年のようだ。王妃とは名ばかりで、実のところ体のいい子守り役をお探しだったのでしょう」
「何をおっしゃる。フェリシエ嬢のあのキツイ性格で子守り役が務まるとでも?せいぜい生け贄役でしょうな!」
ハハハ……と上機嫌に話す貴族達にフィガロはピクリと顔を強ばらせた。
「フィー?」
不思議そうに首を傾げるフェリシエ。
「……なんでもないよ」
聞くに耐えない中傷は、幸いフェリシエには聞こえていないようだ。
一方、若いご令嬢がたは、神々しいまでに美しいけれど、どう見ても少年にしか見えない竜王陛下の姿に興味しんしんだ。
「ご覧になって。竜王陛下はなんてお美しいのかしら。でもまだ成人なさっていないのではなくて?」
「本当に。お可愛らしいわ……でも、フェリシエ様とでは年齢差が心配ね」
「美少年……尊い……」
口々に噂すれど、さすがに近寄って話し掛ける勇気がないのか、二人を遠巻きに見つめている。
そこに、ジョルジュと王太子妃である聖女。フェリシエの両親。ついでに叔父が歩み寄ってきた。
「これは竜王陛下。お逢いできて誠に光栄です。私はこの国の第一王子、ジョルジュです」
無駄にキリッとした顔を作る馬鹿王子。
(本当に……どうしてこの顔が格好いいなんて思ってたのかしら)
よく見るといかにも軽薄そうな顔をしているのに。
「キャサリンですぅ。わぁ、竜王陛下、ちっちゃくて可愛い~。フェリシエ様、これから王妃同士仲良くしてくださいねぇ」
露出度の高い派手なドレスに、たゆんたゆんと揺れる豊かな膨らみ。なるほど、これが馬鹿王子のハートを射止めた聖女か。男性人気が高いのも頷ける。
「フェリシエ!役立たずのお前を拾って下さったのだ!これからはしっかり竜王陛下にお仕えするのだぞっ!」
偉そうなジョルジュの言葉に相変わらずだなぁとため息が出る。無能なくせにプライドだけはやたら高いのだ。無能なくせに。フェリシエは段々イライラしてきた。
「ふふ、ジョルジュ様ったらぁー。フェリシエ様にもたっくさん、いいところはあるはずですよっ!おっぱいはちょっとちっちゃいけどぉ」
これまた意外なところからマウントを取られた。まぁ別に事実だからどうでもいい。そもそも胸がでかいと垂れるではないか。
思わずふっと遠い目をするフェリシエに、フィガロの纏う空気が変わった。しかし、なお畳み掛けるように公爵夫妻と叔父がにじりよってくる。
「竜王陛下には我が娘をお気に召していただき大変光栄でございます。今後は我々のことを実の親だと思ってくださって構いませんよ。なぁ、お前」
「ほほほほ、そうですわ。これからは私達が竜王陛下の親族になるわけですからね」
「フェリシエ!ワシへの恩を忘れてないよなっ!厄介者のお前の面倒を見たのは誰だ?ほら、お前からも陛下に……」
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