ルソン村へ!村長との出会い!

 フェイさんにアドバイスを貰った僕とカシクは、その足でルソン村に向かった。


 ルソン村までは乗合馬車で6時間ほど。腰が痛くなる。長旅だ。昼に出発したので、ルソン村に着く頃には、日が暮れそうになっていた。馬車を降りるなり、村の人達が僕らを歓迎してくれて、直ぐに村の宿泊施設へ案内してくれる。部屋で休んでいると、ノックの音がした。


「はい」

「この村の村長です。入ってもよろしいですか?」

「はい!大丈夫です!」

 僕が元気よく返事をすると、ドアを開けてルソン村の村長と名乗った男性が顔を見せる。意外過ぎる程に若くて、僕は内心驚いた。外見だけだと、まだ30代前半にしか見えない。青い髪をオールバックでまとめて、小奇麗な服装をしていた。こんなに若い人が村長なんだ……。テンプレートな「村長」ってイメージからは、遠くかけ離れている。


「初めまして、冒険者様。私がルソン村の村長でございます」

「は、初めまして。僕はセイルと申します!」

 立ち上がって挨拶をすると、村長は爽やかな笑顔で何度か頷いた。彼はクエスト依頼人である。端的に言えば雇い主なんだから、立場は上だ。それなのに村長は、とても腰が低い。


「俺はカシク。村長さん、よろしく」

「はい。セイルさんとカシクさんですね。よろしくお願いします」

 カシクは、そんな事などお構いなし……といった態度で、村長に挨拶をする。僕は内心ヒヤヒヤしたが、カシクのそんな失礼な態度にも、村長は笑顔で対応してくれた。


「早速なんですが、ゴブリン退治に関して少しよろしいですか?」

「ええ!ぜひ!」

 僕が元気よく返事をすると、村長は手に持っていた資料を、部屋の中央にある机に広げた。資料を覗き込んでサラっと目を通す。資料には村の地図と、いくつかの印がしてあった。


「この印は?」

「はい。この印がしてあるところにゴブリンがよく出るんですよ」

「そうなんですね。じゃあ、この印がある所を中心に警備します」

「ありがとうございます。ちなみに襲来するゴブリンなんですが、種類は……」

 村長が新しく資料を取り出そうとしたのを見て、遮るようにカシクが言った。


「冒険者ギルドで確認済だよ。そんなに強いやつは居ないみたいだな」

 カシクの言葉に、村長は目を見開いた。


「おお。流石ですね。そこまで確認してきて下さる冒険者様は初めてです」

 村長の顔を見ると、実際に僕たちに期待してくれているのが分かった。僕は少し嬉しくなって、笑顔でカシクに視線をやる。カシクも顔には出さないが、嬉しそうだ。長年の付き合いなので、それが分かった。


「ゴブリンは夜中に行動することが多い。もう少し休んだら、警備を始めるよ」

 カシクが言うと、村長は何度も頷いて頭を下げた。


「ありがとうございます。あと、ゴブリンの巣の場所なんですが」

「あ……ゴブリンの巣の駆除は、今回確約出来かねるんです。すいません……」

「そうなのですね……承知しました」

 僕の言葉を聞いて、村長が少し残念そうに返事をする。その様子を見ていたカシクが、少し声を大きくして村長に言った。


「余裕が出来たら巣も駆除するつもりだ。場所を教えてくれると有難い」

「お!そうですか。感謝します、カシクさん」

 僕はカシクを止めようとしたが、カシクは自信満々で村長からゴブリンの巣の場所を聞いて、地図に印を付けた。


「では、警備及び駆除が終わったら、お声掛け下さい。お待ちしております」

「はい。あと数時間後にはココを出ますね」

 僕が言うと、村長は笑顔のまま一礼して部屋を出て行った。村長が部屋を出て、足音がしなくなったのを確認してから、僕はカシクに言った。


「おい、カシク!どういうつもりだよ!ゴブリンの巣の駆除はしないって、フェイさんと約束したじゃないか」

「あー……確かに約束はした。でもまあ、もしも余裕があれば、駆除しようぜ。追加報酬は結構良い額だし。余裕があれば……で良いからさ」

 カシクは肩をすくめながら、頭をポリポリといた。カシクが嘘をく時の癖だ。あー……悪い予感がするなあ。僕は、はあ……と嘆息たんそくして自分の武器の手入れを始めた。












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