第3話 黒き過去、白き未来(前編)

目覚めてから今日で三日目。私は相変わらず同じような生活していた


朝食をとり、白服の人達からの検査を受けている


私はここのことを聞いてみようと思った




「あの、すみません」


「ん?どうしたの」




答えてくれたのは私にナマエをくれた女性だった




「ここはどこなんですか?そういえば私ここのこと知らないと思って」


「そういえば教えてなかったわね」




女性は少し考えてから私に言った




「シロナも目覚めて三日目になるしここのことを案内しておきましょうか」


「そうだね。それじゃ案内は君に任せるよ、残りのメンバーはいつも通り仕事だ」


「はい」




そう言われ、女性以外の白服の人達は部屋から出ていった




「それじゃ施設の中を歩きながら説明していくわね」




彼女はそう言うと私の手を引いて部屋の外に出た


初めて出る部屋の外は左右と前方に道が続いていた。それなりに広い場所のようだった




「広いですね...」


「そうね」


私は建物の広さに呆然とし、女性は私の顔を見てクスクス笑っていた




「それじゃまずはこっちね」




手を引かれて部屋の扉から真っ直ぐ進んでいくと奥の方からガラス越しに周りが広がっていった


辿り着くとそこにはベッド寝たきりの子供だったり、身体の一部の自由が利かない子等様々な状態の子供達がいた




「この子達は...」


「ここにいる子供は皆戦災孤児、つまり戦争で親や家を失った子供なの」


「戦争......」


「シロナ、どうしたの?」


「え?」




私は戦争という言葉を聞いた瞬間泣いていた




「あれ?何で、涙が...」




何故かは知らないが子供達を見ていたら涙が溢れてきていた


私は彼女からハンカチを借りて涙を拭った




「落ち着いた?」


「...はい」




私と彼女は一端場所を変えて一息ついた




「すみません、ご迷惑をおかけして」


「いいわよ、多分あなたは記憶がない分感受性が普通の人より豊かなのかも知れないわね」




彼女の話ではどうやら私は記憶がない分、他の人の痛みや悲しみが伝わりやすいとのことらしい




「そういえば三日目になるけど、まだ名乗っていなかったわね。私の名前」


「そういえば...」




私は彼女の名前をまだ聞いていなかった




「私はルキ、この施設の研究員よ。改めてよろしくね」




彼女は軽く挨拶をしてそのまま次の目的地へと私の手を引いて歩いていった




その後は食堂やトイレ、遊具施設等を見て周り私は自分の部屋に帰ってきた




「一応このくらいかしらね。何か気になるところとかあった?」


「特にはありませんでしたけど、ルキさん達が何の研究をしてるかは気になります」


「あー、そう言えば言ってなかったわね」


「何の研究してるんですか?」


「私達は差別を無くす研究をしているの」


「差別を無くす?」




私が聞いた瞬間施設内に大きなアラームが流れ始めた




「あ、いけない。そろそろミーティングだから戻らなきゃ。それじゃ部屋で大人しくしてなさいね」


「はい、ありがとうございました...」




私がお礼を言い終わるとルキは足早に駆けていった


私は言われた通り部屋に戻りベッドに腰かけた




「差別を無くす...かぁ...」


私はさっきの言葉思い返して耽っていた




「何の話?」


「わあああああぁぁ!?」




後ろから突然声をかけられて私は驚いた


声をかけてきた人物の正体はクロナだった




「ク、クロナ...」


「驚かせてごめんなさいね」




私は呼吸を落ち着け、クロナは軽く謝罪してから椅子に座った




「それでさっき何て言ってたの?」




私はクロナに聞いてみた




「ねぇ、クロナ。差別って無くなると思います?」


「なくならない」




私の質問にクロナは有無を言わさず答えた




「即答ですね...」


「...一時的に収まっても、すぐに火種は出来て発火する。差別ってそういうものでしょ」


「クロナ...」




クロナは少し暗い表情でそう言った




「...今日はもう戻るわ」


「あ、クロナ...」




私の静止を聞かずクロナは足早に部屋を出ていった




「昔何かあったのかな?」




私はさっきのことをクロナから聞くため部屋に残り続けた


しかし、その日の夜にクロナが来ることは無かった

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