第7話 暗黒王城

秘密の通路を抜けると、そこには綺麗な庭があり、少し灰色にくすんだ大きく白い城があった。

しかし、今にも雨が降り出しそうな、厚い灰色の雲に覆われ、空は暗くなっており、その城は薄気味悪く見えた。


「おっ、お父様、お母様。。。」

暗黒王城を見て、魔法使いの少女はそう呟くと、両膝を着き、その場にうずくまった。

「大丈夫か?」

戦士はそう言うと、少女の背中を優しく摩りながら、少女の顔を覗き込んだ。

「はっ、はい、大丈夫、です。」

少女はそう言うと、右手で頭を押さえながら、ゆっくりと立ち上がった。


「ケーベル、アルフド・・・

お願い、待って。」

突然、そう言うと少女は、城の扉を見つめたまま走り出した。

戦士は走り出した少女の腕を掴もうとした。

しかし、少女の腕は、戦士の手をすり抜けた。

「あっ、待て、待つんだ。」

戦士は走り出しながら、そう言った。

勇者も同時に走り出し、少女の後を追った。


走りながら少女の体は、どんどん薄くなった。

少女が暗黒王城の扉に近づくと、それを待って居たかのように扉が開き、少女を中へと招き入れた。

勇者と戦士も、城の中へと駆け込んだ。

「なんだ。。。」

城の中に入り、戦士は言葉を失った。


そこは広いホールになっていたが、中は綺麗に装飾されていたのだ。

至る所に花が飾られ、綺麗なカーテンが掛けられており、とても魔王が住む城とは思えなかった。

「魔法や幻影の類では無いな。」

飾られている花を触りながら、勇者が言った。


ホールは2階建てになっており、ホール正面奥には、2階へと上がる階段があった。

その階段は、途中の踊り場で、左右に別れていた。

踊り場の壁には、ホールを見下ろすように、城主の大きな肖像画が飾られていた。

さらに、その肖像画の左横には、城主の妃の肖像画が飾られ、右横には娘の肖像画が飾られていた。


その肖像画を見た時、勇者と戦士はとても驚いた。

娘の肖像画は、魔法使いの少女にそっくりだったのだ。

「なっ、まさか。。。」

戦士はそう言って、ジッと娘の肖像画を見つめた。

「あの少女は、魔王の娘、だったのか。。。」

勇者も、肖像画を見つめながら言った。


「だが、あの少女が誰であれ、俺たちの仲間であることに、変わりは無い。」

勇者が続けて言った。

「ああ、そうだ。」

戦士も強く言うと、2人はホールの中と、その左右にある客間の中を調べた。

しかし、何処にも魔法使いの少女の姿は無かった。

「奥へ進もう。

彼女が心配だ。」

「ああ。」

戦士がそう言うと、勇者も強く返事をし、2人はホールの左奥にある扉を開けた。


扉の先には、広く綺麗な廊下が奥へと伸びていた。

廊下にも綺麗な花が飾られ、鮮やかなカーテンが掛けられていた。

廊下の右側には、幾つかの窓が付いており、その窓から中庭が見えていた。

中庭の中央に、綺麗な彫刻が施された白い噴水があり、その噴水へと続く石畳が、廊下から中庭へと出る、扉の方へと伸びていた。

噴水や石畳の周りにも、綺麗な花が植えられていた。


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