第6話 秘密の通路(2)

「あそこが、上へと続く通路の出入口だな。」

戦士が魔法使いの少女を見ながら言った。

「はい。

たぶん、あそこの壁も、グローデスで擬態されていると思います。」

勇者、戦士、魔法使いの少女は、赤く光る壁の前に来ると、少女の魔法によって、その擬態を解いた。

「ありがとう。

とても助かるよ。」

ボッカリと開いた穴を見ながら、勇者が少女に礼を言った。

「いえ。。。」

少女は顔を赤くして、嬉しそうに言った。


そうして3人は、秘密の通路を上へと登った。

「ここで、10層目か。

そろそろ、暗黒アンコク王城オウジョウに着いても良さそうだな。」

戦士が剣を鞘に納めながら言った。

「そうだな。

邪念や悪意に満ちた、強い思念を感じるから、魔王の近くまで来ているのは確かだな。」

勇者も剣を鞘に納めると、周りを見ながら言った。

3人は襲撃してくる魔物たちを倒しながら来たが、魔物たちは洞窟に特化した物たちに変わっていた。

「魔物も、クセのある強い物たちばかりだし、気を付けて進もう。」

「はい。」

勇者が笑顔で少女に言うと、少女はとても嬉しそうに返事をした。


次の層へと上がった時、3人の前に、少しだけ広い空間と、その壁に空いた多くの、通路の穴が現れた。

「これは。。。

どうやら、迷路になっているようだな。」

その通路の穴を見ながら、戦士が言った。


「あっ、これって。。。」

そう言って、魔法使いの少女が魔法を掛けたが、魔物たちの足跡は現れなかった。

「やっぱり、ダメです。

この地面に生えている苔の様な物のは、トルキアスという魔草の一種で、足跡を消してしまうんです。」

少女が、少し悲しそうな顔で言った。

「そうなのか。

と、なると、1つずつ確かめるしか無いな。」

戦士がそう言うと、

「いや、ちょっと待ってくれ。

お嬢さん、通路の穴が行き止まりになっているか、調べる事は出来るかな?」

勇者が少女を見ながら聞いた。

「なるほど。

正解の通路を見つけるんじゃなくて、不正解の通路を潰していくんだな。」

戦士が勇者を見ながら言うと、勇者が大きく頷いた。

「解りました、やってみます。」

魔法使いの少女は、嬉しそうな笑みを浮かべると、壁の通路に向かって魔法を掛けた。


「この通路です。

ここだけ、魔力が返って来ませんでした。

だから、何処かに繋がっているはずです。」

少しして、少女が1つの通路を指さして言った。

「ありがとう。」

勇者が笑顔で少女に礼を言った。

「よし、じゃあ行くか。」

戦士も嬉しそうな顔で、気合を入れて言った。

3人は、その通路に入って行った。

そして、魔物たちに襲われる事も無く通路を抜けると、そこは、さっき3人が居た場所だった。


「えっ、そんな?」

少女が驚いて言った。

「さっきの所に戻って来たのか。」

戦士もガッカリしたように言った。

「ゴメンなさい、わたし間違えて。。。

もう一度、やってみます。」

少女は悲しそうに言うと、また、壁の通路に魔法を掛けた。

「えっ、どういうこと?

全ての通路が、何処かに通じてるみたいなんです。」

少しして、少女が悲しそうに、戸惑いながら言った。


「なるほど、そういうことか。」

それを聞いて、戦士が言った。

少女は、意味が解らず、戦士を見つめた。

「俺たちは通路を通って、元の場所に戻って来た、と思った。

だから間違えたと思ったけど、それはトラップなんだ。」

勇者が、3人が通って来た通路を指さしながら言った。

「つまり、俺たちは元の場所に戻ったんじゃなく、元の場所に似た、別の場所に出たってことだ。

だから、もう、ここから出れば良いってことだ。」

戦士はそう言うと、その層の出入口を指さした。


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