第5話 秘密の通路(1)

魔法使いの少女は、岩から少し離れると、岩に向かって魔法を掛けた。

すると、黒色や茶色が混ざったゴツゴツとした岩の表面が、揺らぎ始めた。

そしてゆっくりと色が緑色へと変わり、岩が葉に変化した。

「これ、グローデスと言って、魔草の一種なんです。

こんな風に、少し魔法を掛けると、葉が岩に擬態するんです。」

少女が少し得意そうに説明した。

さらに少女が魔法を掛けると、グローデスの葉は枯れ落ち、ぽっかりと洞窟の黒い穴が開いた。


突然、洞窟の穴から数体の魔物が飛び出して来た。

「きゃーっ。」

少女は短い悲鳴を上げ、後ろを向くと、その場にしゃがみ込んだ。

魔物が少女へ襲い掛かろうとしたが、それよりも早く、戦士の剣が魔物を斬りつけていた。

魔物は悲鳴を上げると、その場へ倒れ込み、息絶えた。

「お嬢さん、大丈夫か?」

戦士が剣を構えたまま聞いた。

「はっ、はい。」

少女が立ち上がりながら返事をした。


勇者が、魔物たちに向け左手に装備している小さな盾を構えると、そこから強い衝撃波が発生した。

その衝撃波で、魔物たちは洞窟の中へと、吹き飛ばされた。

「入口で待ち伏せをしていたと言う事は、ここが秘密の通路で、間違いないな。」

勇者はそう言うと、剣を抜いた。

そして、戦士と共に、洞窟の中へ飛び込み、魔物たちと戦い始めた。

魔法使いの少女も、続いて洞窟に入り、急いで魔法を掛け、洞窟内を明るく照らした。


明かりを嫌う魔物たちは、その光によって戦意を失い、洞窟の奥へと逃げて行った。

残った魔物たちは、勇者と戦士により、バタバタと倒されていった。

洞窟の入口で、十数体の魔物たちが倒された。

「ふぅー、片付いたな。」

戦士が剣を鞘に納めて言った。

「ああ。

暗黒アンコク王城オウジョウは、山の上にあるから、ここが、秘密の通路の最下層ってことだな。」

勇者はそう言うと、魔法で明るく照らされている洞窟の中を見た。


洞窟は、入口は狭いものの、中は広く、凸凹としており、岩や大きな石が転がっている、広場のようになっていた。

「ここから上へと登れば良いわけか。。。

だが、上へのルートを探すだけでも、大変になりそうだな。」

戦士が、広場を見回しながら言った。

「そうだな。

ここは魔物の巣のようなものだから、今までのように足跡を辿ることは難しいし。。。」

勇者も、少し考え込みながら言った。


「あっ、あの。

ひょっとしたら、簡単に見つけられるかもしれません。」

勇者と戦士を見ながら、魔法使いの少女が言った。

「ん、何か良い方法があるのか?」

戦士が少女を見ながら聞いた。

「はい。

ここの洞窟の入口は、魔法で擬態されていました。

だから、上へ登るルートも、魔法で擬態されていると思うんです。」

「確かに、そうだね。」

勇者が、ジッと少女を見ながら言った。

「それなら、魔法が掛けられている所を探せば良いから。。。」

そう言うと少女は、広場に向かって魔法を掛けた。

すると、広場の奥にある、壁の一部分が赤く光始めた。


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