第2話 討伐へ

「まあ、難しい事はさておき。。。

これだけの魔法を使える相手だ。

心して掛からないと危ないぞ。」

戦士が、指の骨をポキポキとならしながら、キリッとしまった顔で言った。

「そうだな。。。

村長、肝心の魔王の居場所は、解っているのですか?」

勇者が村長を見ながら聞いた。

「ええ、それはもう。

そこの川を上流へと遡って行くと、昔から魔王が住むと噂のある山に出ます。

その山奥には、もう何百年も前からある大きな城、暗黒アンコク王城オウジョウがあるそうです。

恐らく、そこに隠れ居るのでしょう。」

村長は川の方を指さし、青い顔で説明した。

「そうですか、ありがとう。」

勇者がそう言って出発しようとした時、村長が3人を引き留めるように言った。


「あの、もしよろしければ、そちらのお嬢さんを、村でお預かりしておきましょうか?

魔王はとても危険ですので、お嬢さんでは歯が立たないかもしれませんし。」

村長が、ニタニタとイヤらしい笑いを浮かべながら言った。

その顔を見て、魔法使いの少女は、戦士の後ろに隠れた。

「申し出はありがたいが、彼女は俺達と一緒に行きたいらしい。」

戦士はそう言うと、剣を少しだけ鞘から抜いた。

キラリと白く光る刃が、村長の目を差した。

「わっ、解りました。」

村長は真っ青な顔で、後ずさりしながら言った。

川を上り始めた3人の姿を見て、

「チッ、娘は高値で売れそうだったが、一緒に死にたいと言うのであれば仕方あるまい。

では、魔王様へ伝令のオオカミを走らせろ。」

「はっ。」

村長は、馬車の御者に向かって言った。


3人は、しばらく川沿いの平坦な道を進んで行った。

そうして夕方近くまで歩くと、急に道が険しくなってきた。

「あれが、魔王が住んで居る山か。」

小さな丘を登った所で、勇者が言った。

3人の前には、まるで壁のように連なる、高い山が見えていた。

その山は、夕日に照らされ、不気味に赤く光っていた。

「今から山に入ると、こちらが不利だな。」

戦士が勇者を見ながら言った。

「ああ、そうだな。

今夜は、ここで野宿をするとしよう。」

勇者もそう言うと、川から少し離れた所で火を起こした。

3人は持って来た、乾燥させた肉とパン、それに水を飲み、夕食を済ませた。


「お嬢さん、すまないがマジックトラップを仕掛けておいてくれないか。」

勇者が魔法使いの少女を見ながら言った。

「はい。

魔物に寝込みを襲われないように、するんですね。」

少女は元気よく返事をすると、嬉しそうに聞いた。

「ああ、いくら俺達でも、寝込みを襲われたら、危険だからな。」

戦士が、ニッコリとほほ笑みながら言った。

少女は言われた通り、周囲に幾つかのマジックトラップを仕掛けた。


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