魔王討伐

@KumaTarro

第1話 現場検証

勇者、戦士、魔法使いの3人は、辺境の村に着いた。

村にある唯一の宿に泊まり、夕食を食べていると、そのテーブルに村長がやってきた。

「国内でも有名な勇者様にお越し頂き、ありがとうございます。」

村長は、その風体に似つかわしくない笑顔を作り、深々と頭を下げた。

「ある程度の話は、国王から聞いているが、魔王が現れたそうだな。」

戦士が強い眼力で村長を見ながら聞いた。

「はい。

ここから西へ十数キロ離れた所に、街があったのですが。。。

数少ない目撃者の話によりますと、魔王の魔力により、その街が、一瞬にして消滅してしまったのでございます。」

村長は青い顔で、勇者と戦士に話した。

しかし、チラリと魔法使いを見やった目は、ニヤついた目で、とても気持ちの良い物では無かった。


魔法使いは、10代くらいの少女だった。

彼女は、この村から数十キロ離れた森の中を彷徨っている所を、勇者と戦士によって保護されたのだ。

魔法の帽子にマント、杖を持って居たが、彼女は記憶を失っていた。

勇者と戦士は、その少女を近くの街へ連れて行き、そこで保護して貰おうとした。

しかし、少女はそれを断り、一緒に旅をさせて欲しいと願い出たのだ。

「わたしは自分の名前すら忘れてしまいました。

でも、この街で治療を受けても、治るとは思えません。

お願いです、どうか一緒に旅をさせて下さい。

その中で見聞きする事で、何か思い出せるかもしれませんから。」

少女のその強い言葉に折れ、勇者と戦士は、少女を仲間に加えたのだった。


「そうですか。

わたしたちも、長旅で疲れています。

今夜はここでゆっくりと休ませてもらい、明日の朝、その街まで案内して貰えますか?」

勇者がそう言うと、村長は快く返事をした。

そしてニタニタ笑い、ジロジロと魔法使いの少女を見ながら下がって行った。

「ケッ、イケすかねぇ、好色オヤジが。」

戦士はそう言うと、一息でビールを飲み干した。

「ああ、そうだな。

お嬢さん、大丈夫かい?」

勇者はそう言うと、魔法使いの少女を見た。

「はっ、はい。

ありがとうございます。」

少女は可愛らし笑顔を浮かべると、チョコンと頭を下げて礼を言った。


翌朝、3人は村長が用意した馬車に乗り、村を出発した。

森の中を1時間ほど進んだ所で、御者が馬車を止めた。

「着きました、ここです。」

御者がふり返って言うと、3人と村長は馬車を降りた。


目の前には、直径が2キロほどの、巨大な真っ黒い穴が空いていた。

穴の底の方に、赤く光るマグマが見えており、そこへ向かって、川の水や地下水が滝の様に落ちていた。

「はぁ~~~っ。

こりゃ、スゲぇなぁ。」

戦士はとても驚いた顔で、黒い穴の底を見ながら言った。

「ここには、2千人が暮らす街がありました。」

村長も青い顔で、黒い穴を見ながら言った。

「しかし、いったい、どうやって街を消滅させたんだろ。

爆発したような形跡は無いし。

まるで巨大なナイフで切り取られたみたいだ。」

勇者も驚きながら言った。


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