第44話 過去3
「あなたはどうしてそんなに、おびえてるの」
「分からない、人と関わるのが辛い」
「分かるその気持ち、でも安心して、私はあなたを悪くはしないわ」
「本当に?」
それから私はミフリから多くのことを教わって、森から一人で生活できるくらいに成長できた。
そして旅立の時が来たのである。
「私はミフリ様や博士に驚かれるくらい立派な存在になってみせる」
「こんにちは」
「っ!」
旅たちからの矢先、私は何者かに話しかけられた。
「何よあなた」
「私は全てを知るもの、私と手を組まない」
「……」
突如そう言って手を差し伸べてきたが、私は無視をした。
「ふふふ、あなたの過去を私は知っている。手を取ったらどうかしら」
「あなたはいったい何者なの」
「凄く難しいですわね」
私は森でじっとしていた。それをするだけで気を得が楽になるのだ。
そんな私の元に突如この世界では見たことがないような服装をした人物が現れた。
「でもそれじゃあ、これだけではいけない」
「あなたはいったい何?」
「未来を知るもの」
「え?」
「いい? あなたが大切に思っているその人は悲惨で凄惨な事態に陥ることになる。なればこそ私はあなたにその事実を教える義務があると思っているの」
「そうなの」
瞬間式と共に炎に包まれるミフリの城が目に刻まれる。
「いやあああああああ!」
「分かったでしょ。この世界には何も救いがない。だから全ては当人の努力の不足分が自分に返ってくるように出来ている」
「分からない。これは何のビジョン?」
「未来のビジョン」
「何でそんなことを知っているの」
「私が特別だから」
「じゃあ、どうすれば避けられるの」
「普通は無理だろうね」
「そんな、嘘よこんな光景」
「本当だよ。そしてこの凄惨な光景は避けることは普通できない」
「もうだめ」
「だけど私がいれば話は変わる。私は知っているこの凄惨な光景を避ける方法を」
「本当に?」
「ええ勿論、私の手をだから取るといいわ」
悪魔のささやきのごとく、私の本能を惹きつける目の前の人物のそのオーラは、自然と私が手を取るように動かしていた。
「決まりね。全てをお話しするわ」
「私はね、違う世界から来たの」
「違う世界?」
「うん。正確には遠い未来の世界、そこではこの世界と同じような成り立ちとなっていた」
「凄い」
「でしょ? 私もここに来たとき驚いたわ。でもある日そんな平穏は終わりを迎えるの」
「どういうこと?」
「あなたも見たでしょ? 炎に包まれた凄惨な光景、私も体験したのよ。そして誓ったの、大切な人を守るために、私はこの力を使い果たすと」
「ではあなたはこんな光景を直に味わったと」
「ええ」
「それは、なんだか心が痛みます」
「あなたは凄く物わかりがいいのね」
「そんなことはありません。ただ私は凄く理解されない環境から生まれたので、話を分かってもらえる人と会ったときにとても喜びの気持ちを抱きました。だから私もそんな境遇の人には凄く共感できる部分があるんです」
「それを聞いて私は凄くうれしい気持ちになったわ。あなたは心が優しい」
「なんだかお互いに分かりあえそうですね。私はエレメナ」
「ああ知ってるわよ」
「え? ご存じなのですか?」
「ええ、だって私の見せたこの光景を作り出したのがあなたなんですから緑陰の魔女」
「何を言って……」
その時あたりが凍り付いたように、時間静止が起きた。
「緑陰の魔女? なんですかそれは、私はエレメナですよ」
「そうよあなたはエレメナであり緑陰の魔女でもある」
「意味が意味が分からない」
「緑陰の魔女、全てを破壊する最強の魔女よ。最初あいつは力をセーブしてた。底知れない奴、私は彼女を舐めていた。まさかあんな力を持っているなんて」
「何を言っているのよ意味が分からない」
「ごめんなさいね。独り言に走ってしまったわ」
「……」
「あなた自分の力に飲まれているのよ」
「飲まれてないからこうして普通にしていられるの」
「じゃ気付かせてあげるよ。君は緑陰の魔女の分身体にすぎないってことをね」
「これは」
無意識のうちにひかれあうような感覚に陥る。まるでもう一人の自分に呼ばれているかのように。
「分かったでしょ、あなたは本体じゃない。本体が力を分岐させるために生み出された存在」
「いったい何のために」
「それを考えるのがあなたの役割ではないかしらね」
「私の役割」
私の頭の中に一つのビジョンが浮かび上がった。
「気づいたようね」
「私は気づいてしまった。内なる魔力の覚醒は、複数の遺伝子に分岐すると。分岐は記憶の乖離を示す。記憶を乖離させてもう一人のエレメナを作ることで、ミフリとの約束を果たそうとしたのだ」
「どうやら緑陰の魔女の中でも内部で色々あったみたいね」
「緑陰の魔女ではないわ、私はエレメナよ」
「そうよねエレメナ、あんまり思い出したくない名前だったけど」
「私を知っているの?」
「ええ記憶の断片、あなたの他にもいたのよ」
「本当?」
「いずれ現れるよ君の前にも。だけど私たちは緑陰の魔女に対抗するために、計画を実行すべきだわ」
「何の計画?」
「楽園計画」
「なんですかそれは」
「ざっと言ってしまうとミフリの計画をより肥大化したものかしら」
「あなたがなんでミフリ様のことを知っているんですか」
「言ったでしょ私は未来から来たの。先のことは何でも知っているのだわ」
「凄い、では私は未来ではミフリさんを救えていますか」
「パラレルワールド理論って知ってるかしら? 私が体験した世界とあなたのいる世界は全く違うものだから、一概には言えない。そもそもあなたは私のいた世界では見たことがないのよ」
「難しいですね」
「本当そうね。どれだけ面倒なことになったのか」
「でも予想はすることはできる。同じ人がいるルートは結局同じ結末を辿るのよ。何も干渉しなければ」
「なら私でも結末は変えることができるということですか」
「そうねエレメナ。じきにあなたの記憶の断片と本体もここに来るわ。だからすぐに準備に取り掛からないとね」
「分かったわ、私に任せて、来るミフリ様の式に備えるわ」
「心強いね」
私たちは手を互いにつなぐのだった。
「そういえばあなたの名前をまだ聞いていませんでした。お伺いしてもよろしいでしょうか」
「私の名前? うん私の名前はミケレ、よろしくね」
「よろしくお願いしますエレメナです」
「う、うん」
笑顔を見せた旧エレメナに対し、未来のミケレは何とも言えぬ表情になるのだった。
「はっ」
エレメナは自分が洗いざらいすべてを話していたことに気づき、表情をこわばらせる。
「記憶を勝手に垣間見るなんて、博士、あなたとはずいぶんと久しぶりに会いましたが、少々やりすぎましたね。これが狙いだったんですか」
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