第43話 過去2
「そういえばお城はミフリが抜けたから大変なことになっているんだけど」
「そうなの! 大変ねすぐに戻らなきゃ。大丈夫だったの」
「いや私は逃げてきた」
「え?」
ミフリの表情は青ざめた。
「ごめんなさい」
お城ではミフリの大声での謝罪が響き渡る。
「頭を上げてください。我々は無事であったことが何よりですので」
ミフリを探していた、兵たちはたじろぎ困り果てる。
「博士もごめんね」
「ああ、もう済んだことだから気にしていない」
「謝って済む問題とは言い難いですがね」
宰相である。
「げっ、あなた、どうしてここに」
「また騒ぎを起こしたということで、私が監査する羽目になりましてね、今回のことはしっかりとご報告させてもらいます故」
「嫌な奴」
「自業自得ですね。減らず口を叩く前に、自身の素行を振り返ったらどうですか」
「はいはい、分かりましたよ」
「ふん」
宰相は去っていった。
「べー」
ミフリは後ろから宰相に不快な気持ちを体で表現するのだった。
「ミフリ、あなたも恐れ知らずだわね」
「いいですよ、そのうち私が上になりますから、ねえ、エレメナ」
「うん」
遠くからエレメナはテレパシーを受け取ったかのようにうなづく。
エレメナは隠し通路に作った部屋で過ごした。流石にお城はまずいからだ。
度々エレメナの元を訪れた私たちは、装置の研究をつづけた。
「凄いわねエレメナ、あなたこんなに成長して」
それから月日が経過しエレメナはこの世界でも希少な魔法を使いこなすようになったのである。
「私、少し旅に出たい」
「え?」
「魔力がそう囁いているのです。覚醒をもたらしてくれる場所」
「何を言っているの、私と一緒でいいじゃない」
「そうだよエレメナ私からも、ここまで来たんだから一緒にいて欲しい」
「でもそれじゃ成長出来ないのです」
私たちはエレメナの提案に驚きを感じるのであった。
「まあ、でもすぐに帰ってくれるわよね」
「そんなことって」
ミフリは涙を流していたことに私は気づく。
私が初めて出会ってから数年が経過したのだ。そんな月日を一緒に過ごしてきたエレメナがいきなりいなくなってしまうだなんて、あまりにも辛すぎる出来事である。
「とても残念……けど、分かったわ、エレメナの成長を信じてるよ」
「私からも」
「ありがとう」
「絶対帰ってきてね」
「勿論!」
こうしてエレメナと私たちは分かれたのだった。機が熟した時帰ってくることを約束して。
「それからだね、私たちがやっと出会ったのは」
「のわりにはかなり反応が薄いんじゃないの博士は」
「いや私はもう最初にエレメナが帰ってきてから抜け道でミフリと一緒に挨拶は終えたのさ。久しぶりの再会というのもどう反応すればいいかわからんね」
「随分冷たいのね博士は」
「別に構いませんよ。博士とは私はあんまりでしたもんね」
「おい、あんまりでしたとは私も傷つくだろうが……まあとはいえ、ミフリと私とエレメナは壮大な関係にあった。そして神秘結晶へのピースが揃った今、遂に式にてミフリが祝福の計画実行を放つフェーズに来たということだな」
「遂にですね」
私は旧エレメナと博士が凄く目を輝かせているのに気づいた。でも旧エレメナの思惑を私はもう少し知っている。
ならば聞くことは一つだ。
「少し気になったのですが、空白の旅に出たときエレメナさんはどのようなことをしてきたのですか」
「え?」
沈黙が流れた。
「わわ、私の旅なんて大したことありませんよ。普通に森に帰って過ごしていただけですので」
「私も気になるぞ」
「博士までまたご冗談を」
慌てふためく旧エレメナにみんな驚いた表情をする。
「僕たちも聞きたいよね」
「そうですね、同じ名前を持つものとして私も」
みんなも次々と乗ってくるのだった。そんな中博士が装置を旧エレメナに向ける。
「分かりました。仕方がありませんね。ここからお話しするのは私が旅をして得たことの話です」
「あなた凄いわね。そのオーラ私と一緒に来ない」
私はふと意識が目覚めた。そんなときにミフリ様に会ったのだ。
場所はお城から少し離れた森、ここには昔から異常なオーラが出るという噂が立っていたことを後に耳に挟んだ。
その原因は私だったのだ。
「あなた何者?」
私? 私はいったい何者なのか。意識が目覚めたばかりで分からない。
「私はエレメナ」
しかし自然とその言葉が出ていた。
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