第42話 過去1

まだ子供だった時、私たちは王宮の設備を二人で一緒に見ていた。


「ミフリ、この装置はどう思う」


「うーんアクセントが少し足りないかな。もっとこう工夫が欲しい」


「随分注文がうるさい奴だな」


「私はこだわりが強いよ」




 私たちは夜中にこっそり装置の開発をしていた。

 

 真夜中にこっそり抜け出してやるこの感じがなんとも心地よいのである。


「私はね、絶対この装置を完成させるって決めているの」


「どうして」


「だって、私にはみんなに祝福をあげるという使命があるもの。とってもキラキラした祝福を上げることで、あらゆるものが浄化されていくんだよ」


「そ、そう」


「この装置ができればエネルギーの代替が可能となる。でも元となるものがなければどうしようもないと思うんだけどね」


「大丈夫よ、私の勘がきっと現れると確信させてくれているの」


「そうなの」


 いったいどこからその自信が来るのか私はびっくりしてしまう。


「きっと現れる気がするの。そして装置に適合する凄いエネルギーを使って最高のものを見せてくれるに違いないわ」


「本当に」


「ええ」


「はあ、全くミフリに勝てないな」


 あまりにも純粋できらめいたミフリの笑顔は、真夜中なのに神秘的で幻惑的に光り輝いていた。


「私凄い嬉しいの」


 当時はミフリが何を言っているか分からなかった、感覚的なことなのだろう、ひと際感受性が強い人物だったから私はミフリが不思議でならなかった。


 でも今ならしっかりとミフリの言っていることが分かる。ミフリは本気でみんなが幸せになる方法を考えていたんだ。


小さい頃からミフリは凄い広い見識を持っていた。そして行動力も伴っていて今では王女としてしっかりと、行動をしている。私は相変わらず自身の殻にこもって研究しかしてないが、どんどん遠くへ行っていくミフリがとにかく眩しかったんだ。


「神秘結晶!?」


「うん、私の計画はその結晶によって結実するのよ」


「今までの装置で私たちは供給の機能を手にしたわ。今度はそれを増幅するの。その時の作用は私の予想だと神秘的に光が霧散するのよ。名付けて神秘結晶、素晴らしいと思わない」


「うーん、それはまたぶっ飛んだことを考えたもんだね……でも面白い」


 これだから私はミフリの傍を離れられないのである。



 とはいえ疑問が残るものである。なぜミフリがここまでの知見を持つようになったのか、それはある日を境に徐々に増加していったのであるはずだが、増加量を認知する程、小さい頃の私はミフリとそこまで深い話はしていなかった。


 ふとミフリと将来の目標について話し合ったときに、ミフリの知見の広さが知らない間に広くなっていたのが分かったのである。


 聞いてみよう、何かその思想に至るまでにきっかけがあったはずである。


「ミフリ」


「何?」


「いつから、その思考をするようになったのか」


「うーん、分からないかな」


「そう」


 答えてもらえなかったことには残念だったが、いつか教えてくれるはずだ。


 そんなことを思っていた私はエレメナと同伴していたということで犯人扱いされて、追放された。リは突然行動を起こした。


 その日を境にミフリは王国から行方不明になった。


 私はエレメナと同伴していたということで犯人扱いされて、追放された。


「何で私がこんな目に、冗談じゃない。もう隠居する」


 意識が朦朧とする中で私は兵から逃げた。絶対捕まってたまるかという強い意志を持っている。


「いたぞ」


「はっ、もう、至る所に溢れすぎていないか」


 兵の数はあまりにも多すぎた。普通なら逃げられないであろうが、私は日々ミフリと一緒にこっそり抜け出すのに使っていた、隠し通路があったのだ」


「どこに行ってしまったんだよミフリ」


 私は少し心の中にミフリへの怒りを感じそうになるも、すぐさま首を横に降って彼女を信じて待つことにしたのだ。



 隠し通路を抜けると、見たこともない更なる隠し通路が増えていた。


「あら? 見つかっちゃった?」


 そこにはミフリと見知らぬ少女がいた。


「お、お前探していたんだぞ。ここで何をしているんだ」


「エレメナ」


「?」


「この子に会いに行っていたのよ。エレメナ、やっぱり凄いは私の想像以上の可能性を感じる。ねえ見せてあげて」


「うん」


「これは」


 次の瞬間エレメナという少女の目が緑色に輝き神秘的な輝きを放つ。まぎれもないこれは魔力反応である。私はこのエレメナという少女がミフリが予期していた存在であることを確信したのだった。


「まさか、その子が君の言っていた噂の子なのか」


「ええ、そうよ」


「みつかったのか」


「うん、というか目星は付けていたの」


 緑色の髪に緑色の瞳。まさにエメラルドのような彼女はいつの間にミフリと遭遇したのか、それにただならぬオーラを私は感じたのだった。


「ここは心地が良いですね」


「でしょ? エレメナはちょっと住んでるところが異質なのよ」


「いやここは抜け道なのよ。抜け道ですら心地が良いっていったいその子はどんな場所にすんでいたのよ」


「エレメナは森で拾ってきたの」


「森?」


「うん」


「拾ってきたっていうのも凄い表現だけれども、いったい何者なんだこの子は」


「私にもわからない、知らないうちに惹かれるものがあってね、運命的な出会いかしら」


「今では全部ミフリの言ったとおりになっているね。エレメナが現れて、魔力供給もできるようになった。全くどこからその確信が湧いてきたんだ」


「それも分からないわね。なんだかそんな感じがしたの」


「そう、相変わらずなこと」


「……」


 さっきからエレメナは随分と静かである。


「どうしたの?」


「すいません、私はあなたが誰なのか知らないので、どう反応していいか」


「ああ、そうね自己紹介が遅れたわ。私は博士、ミフリのパートナーだよ」


「博士?」


 エレメナは不思議そうに私の名前を聞いて反応した。


「基本的にはそう呼ばれてるから気にしなくていいよ」


「分かりました。私はエレメナですよろしくお願いします」


「よろしくね」


 この子がミフリに大変革をもたらすのは非常に興味深い。私の楽しみはさらに増えたのだ。

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