崩壊ループする令嬢～祝福を享受するのは聖女ではありません～

第41話 慎重な振り出し

「ミフリ様ありがとうございました」

　ループ地点は変わっていなかった。しかし今回はしっかりと理性を保っている。ここで取り乱してしまっては前回の二の舞である。

　私はしっかりと自制を果たした。

「ミフリさん、これからどのような局面を見せてくれるのか、私にしっかりとアドバイスをもらえないでしょうか」

「いい質問ですねミケレさん。私はこれから式を催そうと思うのです」

「式とは」

「私が日々行ってきた成果を発表する式です。そこではエレメナの魔力が神秘結晶に注がれて、多くの人に力が公表されます」

「神秘結晶って、私が持っていたものですか」

「ええ、そうですよ。予定が変更になったのです。ミケレさんがいなければ今頃式を行おうと思っていましたが、まだまだ神秘結晶の覚醒を生み出せそうなミケレさんがいてくれるおかげで私は可能性を感じざる負えませんね」

「そうなんですか」

　私は前回自分が牢に入れられたことにより式が発生したということに気付いたのだった。

　おそらくエレメナは式が始まった時に楽園計画を遂行すると思う。未来の私が言っていたことも気になる。もう少し違ったルートから探すことを考えなくてはいけない」

「それでは皆様お願いいたします」

　ルートは私が激情しなくては元の流れとなる。エレメナとの神秘結晶の覚醒の話、しかしここでは秘密文書解読の時に旧エレメナが本性を現すので決めなくてはならない。

「神秘結晶か、凄いものをもらったねミケレ」

「ええそうね」

「ミケレさんはかなりミフリさんに気に入られているみたいですね。私としてもとても嬉しいですよ」

「そんなことはないわよ」

　エレメナや殿下とのやり取りがあれだけ楽しかったのに、今は乾ききった感覚である。

「それでは行きますよ」

　旧エレメナのリサーチが始まった。ここが正念場である。

「ちょっと待って、秘伝書ではなく博士のところに行かない、ちょっといいことを思いついて」

「いいこととは」

　なんだろうかなり、旧エレメナから威圧を感じる。

「ほら、魔力装置と神秘結晶の雰囲気が少し似ている感じがするの。このことを博士に話そうと思って」

「博士とはミフリ様が以前から結晶のことを話していましたが、確かにミケレさん独特の見解が示せるに違いありませんね」

　私の提案は受け入れられた。

「おお、久しぶりだなお前ら」

　博士は相変わらずラボにこもっていた。

「ミフリの奴式の準備を私にやらせておいていきなりキャンセルだなんて図々しい奴だ。が、それだけの期待をお主に持っているということは、どうにも気がかりだな」

　博士は私を試すような視線で見てきた。

「なんですか」

「非常にお前に興味が湧いたんだよミケレ」

「それはどうも」

　博士に気に入られると少し気味が悪い気がする。

「早速ですが魔力供給装置と神秘結晶について、博士の意見を聞きたいのだけどどうですか」

「非情に面白い質問をするね。やっぱりミフリが見込んだだけのことはあるようだ」

　さらに気に入られた様子である。

「その様子だと、私たちは何をすればいいか考えたときからすでにするべきことは決まっていたのかもしれません」

「いいね、全部話すよ」

　気に入られたことで話も聞けることになる。

「ミフリは昔から非常に面白いことをしていてね。だからこそ私は彼女に対して、何食わぬ顔で意見をいつも提供していたんだ」

「そんなことが王女様に可能なのですか」

「可能だね。私だからこそできるともいえる。悠久の時を過ごしていく中で、ミフリには非常に深層心理を照らし合わせることが可能であった。ならば私の理想的ともいえる心情を持っていたといえるね」

　続いて旧エレメナが話しかけてくる。

「ミフリさん、あなたの心がけは非常に私としても面白いものとなっています。だからこそもっと知りたいですし、私としてもこれから一緒に活動したいとそう強く思うのです」

「成程」

「なればこそ、ミフリさんについてもっと教えてくれませんか」

博士も信頼を獲得した私は、私の提案も受け入れられるのだった。

「ミフリと私はとある計画を一緒にこなそうとしていた。だからこそ神秘結晶の覚醒を式と共に行うことを考えたんだよ」

「博士、そこまで言わなくても」

「いいのエレメナ、それだけの人物よミケレは」

「そうですか」

「いいかい、ミフリ私は小さい頃からの友達だった」

　博士の話が始まるのだった。