第34話 ハイスペックコンビ

「皆様おはようございます」


 旧エレメナのかけ声で一日が始まった。どうやら襲撃はなかったようだ。


「今日は早速殿下の言う魔力供給装置の開発を行いますよ。ミフリ様に是非とも貢献しましょう」


「魔力装置といえば、供給装置は誰が作ったのですか」


「博士がいます」


「博士?」


「とりあえず研究所に行きますよ」


 この時代にも研究所のようなものがあるとは驚きである。


「しかしながらミケレさんは随分嬉しそうな表情で今日朝いましたよね。何かいいことがあったんですか」


「いえ、特に何も」


「ふふっ」


 エレメナの言葉を遮る私を見て、ポリューシラが笑う。流石長いこと私と一緒にいただけに全てお見通しといったところだろうか。


「なんだか殿下も昨晩から雰囲気がちょっと違う気がするんですが、もしかして何かあっ

たんですか」


「いや、その、僕は特に何にもしてないよ」


 殿下も昨晩行っていたことが自然に起きたことであるため、思わず苦笑いである。


「なんだか二人とも凄く怪しいですね! いいですよもう!」


 エレメナはむくれた表情をして、私たち二人を凝視したあと、反対方向に顔を向けるのだった。


「やれやれこれは困ったもんだね」


 殿下はそんなエレメナを見て、頭を触りながら困った様子を見せた。




「しかし魔力生成とはどのようなもので如何なるものなのか」


「魔力生成はね、抽出するんだよ源泉となる魔力を、培養して複数のものを生み出すことができる。だからこそ精度と技術がいるのだけどね」」


「博士なら大丈夫だと思いますね」


「そうだね、魔力供給を作り出す人物なら大丈夫だろうね」





 私たちはラボに到着した。


「ふむふむ、君たちが噂に聞く革命の旋風か」


 何これ博士っていうから高齢の方を想定していたが、随分と若いというか子供じゃない。


「博士はこう見えて実年齢は子供ではありません」


「じゃあ何歳」


「何でお前たちにそんなことを言わなければならないんだ。エレメナ、お前教育がなってないぞ」


「すいません」


 かなりデリケートな話題だったようだ。


「しかしだな、お前たちの着眼点は目を見開くものがある。魔力を媒介として複製するというのはまさに今私が最も注力しているテーマなんだよ」


「なんとそれは凄いことですね」


「お前何様なんだよ。私を誰だと思っておるのだ。天才である」


「すいません」


 博士は随分と地雷が多いようである。


「しかしこの技術は特別な事情があってこそ知りえるもので、だからこそすでにその境地に至っている博士はまさに天才といえるのは間違いないですよ」


 私たちは自分が違う世界から来たことをミフリ以外には公表することができない。これも干渉力というやつである。


「面白い言い方だな、とても興味深いぞ。まあそれを知る必要もないが、エレメナ進行は頼むぞ」


「分かりました。ここしばらくは皆様には博士のラボでやることを手伝ってもらいますゆえよろしくお願いします」


「装置を早く作れたらいいな」


「早くなどというものはないんだよ。それこそ途方もない時間を要する、だから面白いのだ」


「あいにく僕たちはそんな時間はないんでね、このラボの設備を使って早々に終わらせてもらうよ」


「なんだと!? 面白いじゃないか、じゃあやってみろよ」


 なんだか殿下はいつになく闘争心を燃やしている気がする。


「そうとわかれば時間が惜しいな、さっそく取り掛かるよ」


「流石殿下です! 私も手伝います」


 エレメナはやはり殿下にくっついていった。



 しかし殿下は流石ハイスペックである。装置作成もお手の物のようだ。


「お嬢様わたしたちも動きましょうか」


「ええ」


殿下を中心にして構造を組み立てていく、王族の設計図が殿下の頭から構築されていくことによって非常に面白いものが組みあがるのである。


「これが殿下の実力ですか」


 ものの短時間で生成装置をくみ上げてしまったのである。


「お、お前! なんだよ、それは!」


「見ての通りですよ博士、僕の中にあった設計図を具現化したのです」


「ぐぬぬぬぬぬ」


 博士の表情は凄く引きつっていたのだった。


「貴様面白いことをしてくれたな。これからは私のラボの助手になることを許してやるぞ」


「ほうそれは興味深いですね」


 ええ、嘘結構殿下は関心を見せている。


「それは聞き捨てなりませんね」


 真っ先に会話に割り込んでいったのがエレメナだった。


「なんだよお前は、そいつの後ろにくっついていた印象しかないんだが」


「殿下の付き人こそこの私の役割です。殿下をあなたには渡しません」


「知らんわそんなこと。使える奴をスカウトするのが天才である私の特権なのよ。おとなしく従えないっていうんだったら、それなりの能力を見せてみろよ」


 ちょっとこれは結構もめてないかしら。


 そう思って止めにかけようと思う中で殿下を見ると、この光景を見透かしているように思えて踏みとどまった。


 もしかして殿下はエレメナのことを信頼していてわざとやっていたのかもしれない。



「でしたら私の実力を見せてあげます」


「こ、これは」


 エレメナが魔法を見せた。みるみるうちに殿下が作った供給装置に魔力がたまった。


「そんな馬鹿な、この精度でこの量を実現するだなんて」


 博士は魔力に触れた。


「清涼かつ、純粋、これは特級クラスの魔力だ、お、お前ら何者なんだ」


 博士の威厳は完全に消え去ったのだった。

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