第33話 続いて欲しいひと時
会議は終わり各々の解散となった。
「いやあ、流石殿下でした。あのタイミングでの切り替えしはまさに完璧なものです」
「ミフリ様にあの局面での切り替えしてもらいたくて必死だったんだ。何とかうまくいって良かったよ」
「それにしてもミケレさん、最後のはどういった意味だったんですか」
「いや、私にもよくわからないわ。無意識にこぼれてしまった言葉なんだもの」
「そうなんですか」
エレメナは随分と色々と尋ねてくるものだ。でもそのおかげで気持ちが和らいだ。
「お嬢様のことですから何か考えがあったのでしょうね。私にはとにかく素晴らしいことを言っているように思えました。意味は分かりませんでしたが」
「ちょっとミケレさんへの心酔ぶりが凄すぎないかしら。でもいいことだと思いますよ。だって私もその気持ち理解できますし」
ポリューシラは相変わらずあるが、殿下を見つめるエレメナも相変わらずである。
「皆様今回はありがとうございました。無事会議を乗り越えることができました。とはいえ早速なのですが、引き続き信憑性を増すために実行へ移さなくてはなりません」
「分かってます。しっかりと構造は頭に入っていますので、生成所へ行きましょうか」
「ええ、それは明日にして今日は休みましょう」
今日はかなりたくさんのことがあった気がする。殿下の活躍も凄かったが、私なりに思いをしっかり発言できたのではないだろうか。
「難しいですね」
「どうしたのポリューシラ」
「いえ、殿下の掲げる策は実際のところ大丈夫なのかと思いまして」
こう見えてポリューシラの計算能力はかなりのものである。
「魔力供給量の計算上殿下の想定でも2割ほど足りないのですよね」
「解決策は明日といったところだね」
「はい」
問題は山詰みそうである。
「しかしながらエレメナ氏は大丈夫かい、さっきから凄い顔が赤いけど」
「い、いえ、そのみなさんが本当に凄すぎて驚いているんです」
「!?」
旧エレメナの意外な反応に私たちは顔を見合わせる。
「私では全然思いつかないことを思いついてしまう皆様は本当に凄いです」
そういえば旧エレメナとはまだあんまり仲良くしてなかった気がする。そんなことを思って顔を見合わせた私たちは自然に笑顔になった。
「エレメナなんか言ってあげなよ」
「何で私なんですか」
「やっぱり名前が同じだから、一番効くと思うんだよね」
「わかりましたよ」
エレメナは旧エレメナに向き合うと優しく微笑みかけた。
「エレメナ氏、あなたも私たちと同じ仲間なんだから、遠慮しないでね」
それからしばらく、私たちがいる部屋はとても暖かい雰囲気に包まれた。
「どうかしたのかいミケレ」
夜になった、そのたびに襲撃の悪夢が蘇る。
「いえ、なんでもありません」
「正直ミケレが何を考えているかわからない。けど僕は陰ながら支えられたらと思っている」
「でも殿下は私に対して酷いことをしましましたよね」
「酷いこと、そんなことしたか」
「婚約者である私がいながらあなたはエレメナの方を優先した。それが許せなかったんです」
「それは、あまりに独善的じゃないか、僕は縛られたくないんだ」
「はあ、いいですよ。殿下の性格は痛いほどわかっています。だからこそ私はもっとやりたいことがあるのです」
「そうか、確かにエレメナは大好きだけど、僕はミケレのことも大好きだよ。最近は特にそう思う」
「本当ですか。できればどちらか決めて欲しいですね」
「それは難しいね」
「いいですよもう」
「ああ、僕も自分で言っていて酷いと思うよ」
久しぶりに殿下と一対一でしっかりと対話した。思いの他楽しめた気がする。他のみんなは就寝していた。
「殿下は本当に凄い人です。だからこそ私は全力を尽くすまで」
絶対に殿下を救うためにこのループを切り抜ける。
その夜、私は疲れがたまりぐったりと就寝していた。
「はっ」
最後の記憶は殿下と話を窓際で二人きりで話をしていた時である。あれから私の意識はないが、すっかり寝てしまっていたのだろうか。
「殿下!?」
私が寄りかかっているものに、何かぬくもりを感じる。親しみ深い私の好きなものである
「嘘!」
ふと体を起こすと私は殿下の膝の上で横になっていたのである。殿下も就寝のようであるが、これはあまりにも不覚であった。
「この時間が一生続けばいいのに」
それから私は少しだけ、再び寝たふりをするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。