第32話 祝福昇華
「ミケレどうした、顔色が悪いぞ。休息が取れていないんじゃないか」
「殿下!?」
なんだろう、殿下が私の額に手を当ててくれた。今までにはないことである。なんだかこの時系列に戻ってから凄い殿下が私に対して気を向けてくれている気がする。
「ミケレさん、確かに表情が悪いようですね」
「どうしたんだエレメナ急に」
「いえ、ちょっと、つい体が動いてしまって」
エレメナが急に近づいてきて、殿下と同じように私の額に手を当ててきた。これは結構悔しがっていた気がする。
思えばエレメナにはずっと殿下の心をとられていたばかりであった。だからこそ今回のような出来事は凄く新鮮な感覚、少し勝ったような気もした。
「うんうん」
「ミケレ、随分素敵な笑顔をするじゃないか」
「え?」
私は知らない間に笑みがこぼれていたのだった。
「はあ、確かに素敵ですミケレさん、ここ最近ずっと暗い表情だったので、私としてもうれしいですよ」
意外にエレメナも私のことを喜んでくれたようだ。
「エレメナまでありがとうね」
凄く心が清い気分である。前は嫌いであったエレメナも、この切迫した状況の中で一緒に付き合ってくれて、私の心をいつも支えてくれる。これがとてつもなく助かる。
「お嬢様の魅力は無限大ですからね」
「ポリューシラ、あなたは少し表現が大げさなのよ」
「すいません」
「ふふ」
みんななんだかとても暖かい雰囲気に包まれた。
「いい感じになっていますねみなさん。そろそろ行きますよ」
「うん」
気持ちを伝えあった私たちを、旧エレメナが引き締めてくれた。
「皆様おはようございます。今日は会議として城内の大部屋へ移動します。かなり過激な論争が繰り広げられますが、臆する必要はありません」
「わかりました」
遂に会議が始まった。
「ミフリ殿、あなたが掲げた魔力供給の政策ですが、少々余裕がないのではないか。基準値に足りない日が時々散見されますが」
「いえ、問題ありません。ミスは起きうるものです」
「ですがね、少しでも足りない日があるとこちらが困るのですよ。身動きが取れなくなる、そうすれば停滞を招くのです。ここはやはり私が推奨した、話を採用するべきでは」
「あなたの政策はあまりにも野蛮で許容しかねます。ならず者を領内に入れることは許容できません」
「でも確実性はありますよ。彼らの力はかなりのもの、凄まじいエネルギーになりえます。不確実性の魔力を使わなくてもね」
「くっ」
周囲の貴族たちの反応も相手側の有利そうである。かなりミフリはかなり劣勢のようね。ここは私が一つ……殿下!?
「それはどうですかね」
空気を一変させるかのごとく、殿下が正面を切って発言を始めたのだった。
「誰だお前は!」
「自己紹介が遅れましたね。私はミフリ様の新たな代理人です。ミフリ様の政策の信憑性を私がこの場で証明して差し上げましょう」
「代理人……ふん、また何か企んでいたなミフリ」
「ええ、私自身の人選ですのよ」
ミフリはこっちを見てお礼のアイコンタクトを取ってくれた。
「魔力供給は媒体として、魔晶石にすることができます。皆様が使っていたのは魔力の源泉、しかし源泉を使うというのはあまりに浪費といえます。魔力とはそれほど、可能性の塊なのです」
これはまさしく現代知識である。この時代にはない技術を殿下はここに持ち出すことができたなんて。
「そんな方法が可能なのか」
「可能ですね。これから私たちがミフリ様と話し合いながら実用を行う段階でした。これが通れば、従来の心配の必要もございません」
「ぐぬぬ」
反論してきた貴族は歯軋りをして黙り込む。殿下の完全勝利である。
「どうやら決着はついたようですな。他に何かミフリ様の意見に意義のある者はいますか
」
「――」
「いないようですので、引き続き方針は変わらず、ミフリ様の中心の元進める形となります」
流石である。殿下の切り替えしも完璧であるが、この殿下のポテンシャルを見抜いたミフリ様も本当にすごい。
でもこの機会、もっとするべきことがあると思う。
「ではこれで会議は終わりに……」
「待ってください!」
「!」
私は自然と言葉が出ているのであった。
終わりに思えた空気を断絶したためか、この場にいる全員が私の方を驚いた表情でじっと見てきた。
「えーと、あなたはどちら様でしたか」
「自己紹介遅れました。私は先ほどの方と同様ミフリ様の代理人ミケレです」
「またですか、ミフリ様の人選はかなり過激ですな」
「全くだ、私たちも時間が限られていてね、こういうことはできればやめてほしいものだね」
引き止めはかなり周囲の不満をかっているようだ。
「ミフリ様も教育がなっていないのではありませんか」
「いいえ、そんなことはありません。先ずは話を聞いてあげようではありませんか」
ミフリも結構、苦笑いといった感じのようね、事前に何も話していなかったからね。
「それではミケレさん、要件を言ってください」
「私は方針によりアクセントを加えるために、祝福を昇華することを提案します」
「何を言っているのかさっぱり分らんぞ」
「……」
周囲の人たちも反応に困って首をかしげている。しかしこれでいいのである。
「これは決意宣言です。皆様に分かってもらうとかは考えていなくただ、自分の中の思いを言葉にして表現しました。私からは以上です」
「そ、そうですか、何か意見のある人はいますか」
「……」
みんな苦笑いである。というか何を口走ってしまったのかしら。
「特に問題もないようなのでこれで会議は終わりにします」
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