第28話 それあなたの意見ですわよね
静かすぎる。正直こんなのは眠れたものじゃありませんわ。
「ミケレ様安心して就寝してもらって構いませんよ。殿下は私が守ります」
「いや、そうわ言っても難しいものなのよ」
「私を信用していないのですか」
「いやそういうわけではないけど」
とは言いつつもこれまでのループでエレメナが殿下を救ったことはないためあまり信用してはいないのである。
「じゃあ、私に肩を預けていいですよ。ここからは私の出番です。ミケレさんにはしっかり休息をとってもらいもっと頑張ってもらいたいですから」
「はあ、分かりましたよ、くれぐれも気お付けてくださいね」
こうでも言わないとずっとこちらを見てきそうなエレメナに、とりあえずそう言っておいた。
「無論です!」
こうして私は寝たふりをした。
「――」
おかしいそろそろ前回緑陰の魔女が現れる時刻である。しかし場の状況は閑散としていて、何も起こる気配がない。
「いったいこれはどういうことなのでしょう」
「どうしたんですか、就寝してって言ったじゃないですかミケレさん、殿下とポリューシラさんは既にそうしていますよ」
「ええそうなんですが」
干渉力の因果を曲げてしまうため、あまり未来の話をすることはできない、だからはっきりとものは言えないのである。
「どうやら何か異変を感じたようですね。私にはよくわかりませんが、心配いりませんよミケレさん、窓の外には護衛の人だっているのですから」
「そうですね、少し護衛の人の様子が気になるので見に行ってきていいですか」
「ダメです、私が見に行きますから」
そういうと扉のエレメナが向かった。
「何かありました」
「いいえ特には、見張りの人もちゃんといますよ」
「声かけてみてくださいよ」
「ええ、まあ、皆さん何か異常はありませんでしたか」
「いいえ、異常はありません、安心して我々にお任せください」
「だそうですよ」
「成程」
見張りは健在のようですね、本当に何も起きないなんて。何か異様な気配ですね。
それから気が付けば一夜が明けていた。
「何もありませんでしたね」
「だから言ったじゃないですか。私にこれからもお任せください」
「ええ、頼もしいですね」
やっぱり護衛とエレメナが張り付いていたのが大きかったようね。
「おはようみんな、さっそく次に行こうか」
「了解しました」
殿下も起きて私たちはミフリの元へ行くことになった。
「それではみなさん続きを話しあいましょう」
「結局みなさんは何もなくて無事だったようですね。何よりですわ」
「そんなことはありません、まだ油断はできませんよ」
「そうですね」
ミフリは少し考え事をする。
「皆さんについてですが、こちらのエレメナ同様私推薦の専属護衛ということで話を付けました。なのでこれからは私の傍で皆さんには活動してもらいます。その中で危機を一緒に解決していきましょう」
「本当ですか⁉ ありがとうございます」
「なので、皆さんの目的が達せられるまでに私の計画を手伝ってもらいます。不安分子を取り除いてください」
私たちはミフリの依頼として旧エレメナの手伝いをすることになる。
早速現場に向かうことになった。何やらそこで仕事があるらしい。
「ねえこっちの世界のエレメナ」
「はい?」
「あなた昨夜はどこにいたの」
「ミフリ様の傍に普段通りいましたが」
「そう」
「……」
ポリューシラが私の方を覗いてくる。
緑陰の魔女の出現は昔の緑陰の魔女である筈の旧エレメナを怪しむことは普通のことであり、ポリューシラもそうなのであろう。
「これは非常に面白い状況ですね」
「どうしたのポリューシラ」
「いえ、ただ私は何か考えがあるのだと信じていますので」
「そう、好きにするといいわ」
「??」
旧エレメナは私たちのアイコンタクトの意味を分かっておらず首をかしげるのだった。
「しかし情勢の不安要素を取り除くのに、これから大切なことがあります」
「ええ、分かっているわ」
「不安要素として一番大きな存在となるのが、魔力不足です。私たちの住んでいる場所は地下脈にある魔法によって稼働している者が多い、その魔力をどうにかしなくてはなりませんね」
「成程」
「そのためには魔力生成現場での改良が必要となるわけです」
「そんな場所があったのか、非常に興味深いね」
「殿下は魔力生成に興味がおありなのですか」
「まあね、こう見えて僕のいたところでも生成はしていたんだよ。ただどうやらこの場所は僕がいた場所より技術が発展しているようだ」
「失われた技術というわけですか」
これは中々興味深いことになってきそうですね。
やはり一度滅びたものを再生するのは難しいといったところでしょうか。
「私の魔力は殿下のために使うものです。魔力生成だなんて理解できませんね」
「エレメナさんあなたは魔力を自分の意思のために使うのですか」
「当り前じゃないですか、殿下を守るための力、大事なものはただ一つだけです」
「大いなる力を持つ者には、それなりの使命があるものですよ。私はミフリ様と出会ったときにこの力を世のために使おうと誓いましたよ」
「それはあなたの話でしょう? 私には関係のないことですね」
「分かりました。それは残念です」
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