第26話 再会
遂にお互いが遭遇することになる。
「奥の手は何のことですか」
「お姫様にはお伝えしたいことがありますわ。私の世界の人をお二人ほどお招きしましたの」
「お嬢様、そういうことでしたのね」
私はポリューシラとアイコンタクトをとった。
「いいですよ、好きにすればいいでしょう」
「ではすぐにでも呼びに行きますね」
「もうその方たちはこちらに来ているのですか」
「ええ、まあ私の計算だとタイミング的にはこのあたりで来ていそうです」
「分かりました」
私はそれから部屋を出ようとする。
「おやおや、これは先程の」
その時怪しげな雰囲気をまとった話し方をするものが近づいてきた。特徴的なのですぐに気づく。
「あなたは宰相ね。盗み聞きをしていたということは私の身分も分かったかしら」
「勿論ですとも、先ほどは失礼をいたしました」
何か企んでそうな顔ね。
「お嬢様、宰相殿は何か隠し事をしてそうです」
「そうですね、何を企んでいるか言ってみなさいよ」
「フフフ、よく見ていらっしゃいますね。いやね、先ほど周辺に傭兵の見張りを入れてしまいました。ちょっとした手違いでしてね、異方の同じような高貴な服を着た人物を見かけたらとらえるように言ったのですよ」
「それって危ないんじゃ⁉ あなたわざとやったのね」
「いえいえ、今使いを送って止めに行かせましたので、お許しください」
「信じられない、急いでいくわよ」
「了解ですお嬢様」
こうして私たちは殿下の元へ到着したのである。
「これはどういうことですか。あなた達宰相の使いとして、私の知人を連れてくるよう言ったはずですが」
「ああ、依頼主さんですか、すいません宰相さんから依頼要件の変更があったもので」
「なんですって」
「まあばれたときは、引けといわれたので、引くとしますよ。今日はお暇させていただきます」
宰相ですか、怪しすぎる人物ですね。
「2人と再会できてよかったですよ」
「僕たちも一時はどうなるかと思ったよ」
「ですね、危うく力を使おうとしてしまいました」
「力とは」
「何でもありませんよ殿下」
「あまり無理はしないでよエレメナ」
「無理とは? 殿下のためならその尺度はありませんね」
「はあ」
それじゃあお城に案内しますよ。
私たちはミフリの元に訪れた。
「こちらが私の世界の殿下とエレメナです」
「エレメナって」
「私と同一人物ですか」
「それはこちらが聞きたいですね」
エレメナとエレメナが対面する、この状況において最早言語化することができないくらい、何とも言えない気持ちを感じることになったのであった。
「あなたが私で、私が私、殿下意味が分からないです」
「僕にもさっぱりだよ、これはいったいどういう状況なのかいミケレ」
「どうやら事情はまだ知らされていないようですねミケレさん、これは話が長くなりそうです。新たな来客したお二方を私たちは応援したいですね」
「それは何よりです」
現れた殿下とエレメナを歓迎してくれる雰囲気で助かるところではある。
「それではエレメナ、2人をもてなしてあげなさい」
「エレメナ? それは私の名前ですよ」
「え?」
「いや、私がエレメナですよ」
「もしかしてエレメナさんが二人いるのですか」
これは面倒くさい状況になったものである。
「記憶の断片を知っていますか」
「いいえ」
「そうならいいのです」
なんだろう、エレメナに旧エレメナが試すような質問をしていた。
「どうかしたんですか」
「試したんですよ。結果私とのつながりは関係ないようです。気にする必要はありませんよ。名前が偶然同じ、だっただけの話です」
「はあ、そうですか」
エレメナと旧エレメナの繋がりはない、そんなはずはないであろう。それに緑陰の魔女との繋がりも気になりすぎるのだから。
「2人とも本当に何もないの」
「ええまあ」
「そうですね」
「……」
しかしそれは偶然なことである。
「私のご先祖様でないなら気軽な気持ちでいれますね。なんせご先祖様に今の私はあまりに未熟で合わせる顔はありませもの、そうなった場合私の心の中がもちませんわ」
「そんなことはないと思いますよ」
「しかし姫様とエレメナ様のお二方は普段はどんなことをやっていらっしゃるのでしょうか」
「面白い意見ですね。私たちは基本的にはパートナー的な関係ですのよ。エレメナは私の信頼できるパートナーです。力を持ってこそ権威が付く、私の威厳が保たれるのですわ」
「なるほどそれは憧れます! 私も殿下の威信を保つために一生懸命エレメナさんのようになりたいですもの!」
旧エレメナに憧れの気持ちを抱くエレメナ、改めて二人が別人かどうかというのは疑わしいものな気がするのであるが。
「一先ず今夜はここらへんにしておきましょうか」
ミフリ達に殿下達の同行を認められた。これは完全に素晴らしい進歩です。今日は十分すぎるぐらい進歩しました。今夜は安心して睡眠につくことができる。
未来の私の思いを着実に引き継げているに違いないです。このままいけばきっと望む未来に近づくはず。
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