第24話 同じ名前
「え? みなさんお知り合いだったの」
「ええ、まあ、ちょっと道中で」
「こちらの方々は、街へ来たばかりの私を案内してくださったの。とてもいいお方たちでしたのよ」
「あらそうなの」
「まあ」
「そしたら私からもお礼を言わないといけないわね」
「そんな滅相もありませんよ」
まさかお姫様にここまで好意的に思われているとは驚きである。
「皆様は近頃の情勢をどう思いますか」
「近頃の情勢ですか」
確か本の世界では、かなり情勢が荒れていた気がするのだが。
「あまり思わしくないと思いますね」
「そうですよね。私もそう思いますよ」
「だから私が来たのでしょミフリ様」
「そうねあなたのおかげで活路が見出せそうだわ」
物語では魔女の魔法は姫様に希望を与えるくらい凄いとされていたがどうなのだろうか。
「やっぱりお二方の関係性は見ていて微笑ましいですね」
「そ、そうね」
ずいぶんご機嫌なポリューシラ、私はあなたのその表情が微笑ましいですね。
「皆さんに聞いてもらいたいのがですね。私は恐怖を制御し統制したいと思っているのです」
「恐怖とは」
「この悲惨な情勢にメスをさします。人々はいつ来るかわからない破滅に不安を覚えるはずです。なればこそ私はその不安分子を取り除こうというのです」
「どうやって」
「そのために彼女がいるのですよ。私たちの想像もできないことを可能にする魔法の持ち主、その光は周囲のものに祝福を与えると私は実感しています。あなたには期待していますよエレメナ」
「はいもちろんですミフリ様」
「え」
エレメナですってええええ!
私は心の大声を張り上げるのだった。
「あらためて自己紹介させていただきます。私の名前はエレメナ、ミフリ様の専属の魔法使いでございます」
「よ、よろしくお願いします」
どういうことですの、コイツは緑陰の魔女ではなかったのか。それにエレメナのご先祖様がこんなところにいたのかしら。
「お嬢様、これはいったい」
「私にもわかりませんわ。一先ず様子を見るしかありません」
「そうですね」
私たちは小声で聞こえないようにやり取りをする。
「お二方こそこそ何か気になる点とかがありました」
「い、いえいえ別になんということもありません」
「そうですか」
「それではお二方の本題を聞きましょうかね。一体お二方は宰相にどのようなご用件で私の元へ訪ねるよう言われたのですか」
遂にこの質問が来てしまったか。
「私は宰相様から何も頼まれていません」
「え?」
私は真実を語ることにした。
「ちょっとミケレ様どうしていきなりそんなことを!」
「っ!」
凄い鋭い目つきでミフリがこちらを見てくる。
「どういうこと、それはつまりあなたたちは侵入者なの?」
「確かに私たちは侵入者です、しかしあなた達に用があってき」
「問答無用!」
「うわっ」
ミフリは懐に隠し持っていたナイフを私に向けてきたのであった。
「待ってくださいミフリ様、どうやらこの方々が言っていることもまんざら嘘でもなさそうです。見てくださいあれを」
この世界のエレメナが私の手にあったブレスレットに指をさしてきた。
そういえばこのブレスレッドは未来の私に渡された気がする。一体彼女が私に何を伝えたかったのかはあの時は分からなかったが、今ならわかりそうである。
「このブレスレッドの意味をお分かりで」
「……」
ミフリは少し沈黙を作る。
「なるほどそういうことでしたか」
「そうなんですよ。実は私も目をつけていたのです」
「分かりました、そしたらお二方の言うことを認めましょう」
「どうしていきなり!」
まさに手のひら返しである。
「ブレスレッドは予言の来訪者の証、あなた方がその人だったのですね」
「ええ私が」
「流石ミケレ様」
「あなたね」
ポリューシラの嬉しそうな視線が変な期待感を煽られた気がして嫌な感じである。.
まったく未来の私もこの場面を想定済みといえますね。
「してミケレさん改めて続きを、あなたの意思をお聞きしましょうか」
「そうですね。敵も味方も関係ないわ、手を取りあってこそ平和は実現します。それを私は提示しにきました」
「……」
みんな驚いた表情で私を見てくる。
「そ、そんなことが可能なら苦労しませんよ」
「可能ですよ。私ならできます」
「そうですか、非常に興味深いです。期待もできます。でもたとえうまくいったとしても、宰相がそんなことを許さないでしょうね。あれは悪意そのものですから」
なるほど、やはり本の記述通りである。
「だからこそ私の楽園計画があるのよ」
「!?」
「す、すいません何を言っているのでしょう私、ちょっと本に影響され過ぎてしまったみたいです」
何今のいきなり口が勝手に動いたんだけど、しかもミフリ様達が凄い目で私を見てきて結構ショックだよ。
「そ、そうですか……」
ちょっとドン引きされている気がする。
「まあ、そこは考えるしかありませんね」
「そうですね」
「まあ、今日はこうして予言の人と巡り会えた、それはとてもいいことだと思います。だからこそゆっくりしていってください」
「こちらこそ」
しかし私の作戦は次のフェーズへ行っているのだ。もうそれは動き始めている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。